ダ・ヴィンチの絵から彼のDNAらしきものが検出される
ダ・ヴィンチの絵から彼のDNAらしきものが検出される- 2026.01.14 18:00
- 中川真知子
「もし、レオナルド・ダ・ヴィンチの作品に、本人のDNAが残っていたら?」
そんなSFみたいな発想を、本気で試した研究が登場しました。
科学者たちがDNAの抽出を試みたのは、ダ・ヴィンチ作とされる赤チョークの素描「Holy Child(聖なる幼子)」。作品を傷つけないよう、表面を綿棒でそっと拭い、そこに残されていたごく微量の人のDNAを分析したそうです。
筆跡や画風ではなく、「誰が触れたか」という生物学的な痕跡から、作品の出自を探ろうというアプローチです。Live Science Plusが伝えました。
真贋判定に使えるかもしれない
分析の結果、この素描から見つかったDNAは、15世紀にダ・ヴィンチ一族の人物が書いた手紙に残っていたDNAとよく似ていました。
しかも、ただ似ているだけではありません。父系で受け継がれるY染色体の配列が、ダ・ヴィンチの出生地であるトスカーナ地方に共通の祖先を持つ系統と一致していたのです。
「ダ・ヴィンチの絵からDNAが出てきているし、こんなに似ているのならダ・ヴィンチのもので当然では?」
そう思う人もいるかもしれません。
ただし、ここで話は一気に慎重になります。
本当にダ・ヴィンチのDNAなのかな?
というのも、「Holy Child」は、本当にダ・ヴィンチ本人の手による作品なのかどうかが、いまも議論されている作品だからです。弟子が描いた可能性を指摘する専門家もいます。
さらに言えば、DNAそのものも、ダ・ヴィンチ本人のものだとは言い切れません。何世紀にもわたって修復師や管理者が触れてきた可能性があり、その痕跡が残っていても不思議ではないからです。ダ・ヴィンチの親戚が触っていた可能性だってあるでしょう。
つまり、今回の研究の本当のポイントは、「ダ・ヴィンチのDNAを見つけた!」という話ではありません。
DNAという新しい手がかりが名画の真贋判定に使えるかもしれない、という可能性を示唆するところにあります。
研究者たちも、今回見つかったDNAがダ・ヴィンチ本人のものだと断定することはできない、という立場を取っています。
それでも、「もしかしたら本人のものかもしれない」と思わせてくれるだけで、ちょっとワクワクしてしまう話ではないでしょうか。
もし本人のDNAなら「天才の秘密」に近づける?
Image:shutterstockというのも、もし将来、ダ・ヴィンチ本人のDNAをある程度まで再構築できたとしたら、そこから見えてくるのは、単なる真贋判定だけではないかもしれないからです。
芸術と科学を分けずに扱い、異常なまでの観察力と発想力を発揮したダ・ヴィンチ。その才能に、視覚や認知の特性といった生物学的なヒントが隠れている可能性もあります。
かつてダ・ヴィンチ展に足を運んだことがあるのですが、会場は絵画、発明、医学といったテーマごとに分かれていて、「これを全部ひとりでやったの?」と驚かされました。一気に引き込まれ、「もっとダ・ヴィンチのことを知りたい」と思ったのを覚えています。
もちろん、天才はDNAだけで説明できるものではありません。時代、環境、教育、そして本人の執念などが重なった結果が、レオナルド・ダ・ヴィンチです。
それでも、もしDNAの中に“天才のレシピ”のヒントが刻まれていたとしたら――。
ダ・ヴィンチの作品を見る目は、これまでとは少し違ったものになるかもしれません。
Source: Live Science Plus