胸腔ドレーンバッグの仕組みを解説【ウォーターシールと吸引圧がポイント】
胸腔ドレーンバッグの仕組みを解説【ウォーターシールと吸引圧がポイント】

胸腔ドレーンバッグの仕組みを解説【ウォーターシールと吸引圧がポイント】

検査・処置コース 胸腔ドレーンバッグの仕組みを解説【ウォーターシールと吸引圧がポイント】
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  • 医師
  • 看護師
2021年5月18日 (更新日:2023年3月26日)

胸腔ドレーンの患者さんを担当するようになったけど、あのバッグが何がなんだか分からない。

よく聞く、呼吸性移動とエアリークって何のこと

結局、胸腔ドレーンの患者さんはどう管理すればいい?

こういった悩みを解説していきます。

この記事の内容

  • ドレーンバッグの仕組み
  • 呼吸性変動とエアリーク
  • 胸腔ドレーンの観察項目

執筆者:ひつじ

  • 2009年 研修医
  • 2011年 呼吸器内科。急性期病院を何か所か回る。
  • 2017年 呼吸器内科専門医

ドレーンバッグって見た目も複雑で分かりにくいですよね。そこが分からないから、患者さんの管理もどうしていいか分からないし。

でも、ドレーンバッグは「水封」と「吸引圧」が分かれば、実はグッと分かりやすくなります。なので、そこから解説します。

この記事を読めば、ドレーンバッグの仕組みが分かって、さらに患者管理のポイントも分かります。

病院勤務でドレーンバッグが分からなくて困っている人は、ぜひ参考にしてください!

  1. ドレーンバッグの仕組み【水封と吸引圧がポイント】
  2. ドレーンバッグの異変?【呼吸性移動とリーク】
  3. ドレーンバッグの異変?【排液】
  4. ドレーンバッグの異変?【感染徴候】
  5. 胸腔ドレナージの管理【患者/胸腔ドレナージの観察項目】
  6. ドレーンバッグの注意点
  7. 胸腔ドレーンの抜去
  8. まとめ

Youtubeでも解説しています。動画の方がいい方はこちらもご覧ください!

ドレーンバッグの仕組み【水封と吸引圧がポイント】

では、さっそくドレーンバッグを見ていきます。

キーワードは「水封」と「吸引圧」です。この言葉の意味をしっかり理解してください。

日本でよく見るドレーンバッグは、これです。

見た目も複雑で分かりにくいですね。

そこで、模式図にしてみました。3つの部屋があるのが分かります。

では、左側の部屋から順番に見ていきます。

排液ボトル

一番左側の部屋です。

ここは、排液をためるところです。胸水、血胸や膿胸とかです。

水封室

真ん中の部屋で、青い色がついています。ここは水封室で別名をウォーターシールと言います。

シンク下の排水と同じ役割

ここを理解するのに、シンク下の排水を思い浮かべてください。

シンクの下にある曲がったホースが、実は水封室と同じ原理なんです。

これは、曲がった部分に水をためて、下水からの臭いが上がってくるのを防ぐものです。

水封室の役割

これと全く同じ働きをしているのが「水封室」です。

患者側への空気の逆流を防いでいるのです。

「水」で「封」をしているので「水封室」と言います。

英語で「水」は「ウォーター」、「封」は「シール」なので「ウォーターシール」となります。

注意点として、胸腔内は-15cmH2Oくらいの陰圧なので、ドレーンバッグを20cmは体の下に置いておかないと水が吸い込まれて行きます。

胸腔内は-15cmH2Oくらいの陰圧なので、ドレーンバッグを20cmは体の下に置いておかないと水が吸い込まれて行く

吸引圧制御ボトル

最後に、一番右の部屋です。

ここの役割は「吸入圧を一定に保つこと」です。

ここを模式的に表したのがこちらの図です。

例えば吸引圧をかけると、図のように液面が動くのが分かりますでしょうか?

ここで持ち上がった水の高さが、患者さんにかけている吸引圧になります。

この場合、この2つの液面の差です。

なお、泡が出ていないと、水面の高さの差が分からないので意味がないです。

泡が出ているかきちんと確認しましょう。

吸引圧制御ボトルの役割は「吸入圧を一定に保つこと」。

実物を見てみよう

もう一度実物を見てみましょう。

最初より、役割が分かりやすくなりましたでしょうか。

ここまでの話が分かれば、胸腔ドレーンの管理はグッとやりやすくなります。

分かりづらければ、戻って分かるまで読み直してみてください。

ドレーンバッグの仕組みはわかった。実際の管理はどのようにしたらいい?

実際の管理で大事になってくるのが、「呼吸性移動」「リーク」「排液」です。

そこを見ていきます。

ドレーンバッグの異変?【呼吸性移動とリーク】

真ん中の青いボトルである水封室で知っておくべきものが、呼吸性移動とリーク

  • 呼吸性移動:呼吸に合わせて水封室の液面が上下に動く
  • リーク:水封室に泡がでている

ここで胸腔とかの解剖がよくわからない人は、[胸腔穿刺の看護手順、必要物品ついて【10年目の呼吸器内科が解説】]を先に見てください。

少し難しいですけど、ここが分かれば後は分かりやすい内容になります。少しだけ頑張ってください。

呼吸性移動

息を吸うとき胸腔内は-15cmH2Oの圧になり、息を吐くときは-5cmH2O程度の圧になります。

患者さんが息を吸うと、水封室の液面も吸い上げられて上がります。患者さんが息を吐くと、吸い上げられる力が弱まるため、液面も下がります。

これが呼吸性移動です。

もしドレーンチューブの先が、肺にあたっているとか詰まっているとかであれば、この液面の変動はなくなります。

呼吸性移動がない場合は、いろんなケースが考えられます。よくあるのが次の状況。

  • ドレーン留置直後:皮下に迷入、先端が胸膜に接触
  • 気胸数日後:肺が拡張しドレーン圧迫(気胸が治癒)
  • 膿胸、血胸:ドレーン閉塞
  • そのほか:ドレーンの折れ曲がり

必ずしも悪い場合のみではなく、気胸が治癒したという良いことのサインでもあります。

リーク

リークは、つまりは胸腔内からドレーンバッグに空気が漏れている状態です。ドレーンを入れた直後は少しくらいリークは出ますが、ずっと出続ける場合は気胸を考えます。

呼吸性移動とエアリークの組み合わせは以下の通りです。

  • 呼吸性移動(+)、エアリーク(-)
  • 呼吸性移動(+)、エアリーク(+)
  • 呼吸性移動(-)、エアリーク(-)
  • 呼吸性移動(-)、エアリーク(+)

1つずつ見ていきます。

呼吸性移動(+)、エアリーク(-)

気胸などが存在せず、ドレーンの先端がちゃんと胸腔内にある状態です。

呼吸性移動(+)、エアリーク(+)

ドレーンをいれた直後は、通常みられる状態なので問題ありません。

ずっとこの状態が続くなら、気胸がずっと存在するということです。

呼吸性移動(-)、エアリーク(-)

良いケースと、良くないケースがあります。

良いケースとしては、気胸が治癒して肺が十分に広がった状態。

肺が広がったため、ドレーンの先が肺に当たった状態です。

レントゲンを撮影すれば分かります。

良くないケースとしては、ドレーン内が詰まるとか、どこかで折れ曲がっています。

ドレーンチューブを観察してみましょう。

呼吸性移動(-)、エアリーク(+)

通常は起こりません。

む、難しい・・

分かりますでしょうか。ドレーンバッグでも難しい内容なので、分かりにくければ繰り返し見てください。

呼吸性移動は、胸腔内の圧の変動がドレーンバッグに反映されている状態。 リークは、つまりは胸腔内からドレーンバッグに空気が漏れている状態。

ここから先は分かりやすくなってきます。

ドレーンバッグの異変?【排液】

血性

少量のみならドレーン留置に伴うもので問題ないです。

あまり大量ならドレーン留置の際の血管損傷を疑います。

膿胸の場合は、後半は淡血性になることもあります。

膿性

感染の合併を疑います。

排液が急に減った時

ドレーンの詰まり、曲がりなどを疑います。

ドレーンバッグの異変?【感染徴候】

以下の場合は感染の合併があるかもしれません。

  • 排液が膿性になったとき
  • ドレーン挿入部の発赤・腫脹

ドレーンを留置しているとき、患者・ドレーンの管理はどうしたらいい?

では、次はそれを見ていきます。

胸腔ドレナージの管理【患者/胸腔ドレナージの観察項目】

患者の観察項目

患者の観察項目としてはこれらがあります。

  • バイタルサイン
  • 呼吸状態:呼吸困難、呼吸音など
  • 挿入部:腫れ、発赤、疼痛など
  • 皮下気腫
  • 検査データ:白血球、CRPなど
  • 不眠や苦痛など

胸腔ドレーンに特徴的なのは皮下気腫です。

これは、胸腔内の空気が皮下に漏れ出したもの。

皮膚を触るとプチプチする感覚があります。雪を握った感覚に似ているので「握雪感」と言います。

マーキングして変化しないか確認しましょう。

時々かなり広範囲に出る方がいますが、命に別状をきたすものではありません。

チェストバンドなどで症状を緩和します。

胸腔ドレナージの観察項目

以下のものがあります。

  • 呼吸性移動:水封室の液面が上下しているか
  • リーク:水封室に泡がぶくぶく出ているか
  • 吸引圧制御ボトル:吸引圧、少量の泡が出ているか
  • ドレーンのねじれ・閉塞
  • 正しい高さに設置されているか:ドレーンバックは身体よりも20㎝以上低くする
  • ドレーンの接続が外れていないか

それぞれ分かりづらければ、[ドレーンバッグの異変?【呼吸性移動とリーク】]を復習してみてください。

胸腔ドレナージの管理

以下のものがあります。

  • 胸腔ドレーンの注意点を患者に説明する:抜けないようにする、チューブを圧迫しないようにする
  • 毎日、無菌操作で包帯を交換する
  • 排液がいっぱいの時はドレーンバッグを交換する
  • 閉塞している徴候があるときはミルキングを行う

ミルキングとは、チューブの中の血液や排液を、手で揉んだり専用のローラーで流してあげることです。

胸腔ドレーンの注意点

以下の点に注意しましょう。

  • 移動の時などでチューブが抜けないようにする
  • 抜けた時は、空気が胸腔に流れ込まないように抜けた部分を抑えて、助けを呼ぶ

いよいよドレーンを抜くって言われた!

では最後に、ドレーン抜去に関して解説します。

胸腔ドレーンの抜去

ドレーンを抜去する基準

疾患によって変わってきます。以下が目安です。

  • 気胸:リークがない、レントゲンで肺が広がっている
  • 胸水:排液量が200ml/日以下
  • 膿胸:十分に排膿でき、排液も漿液性になってきた
抜去の手順

挿入する時に比べて抜去は簡単です。

  • 固定していた糸を切断する
  • 息を止めてもらう
  • ドレーンチューブを抜去し、創部を縫合する
抜去後の観察項目

抜去後も状態に変わりがないか、観察しましょう。

  • バイタルサイン
  • 呼吸状態
  • 創部の感染兆候や出血

まとめ

いかがでしょうか。難しいところもあったかと思うので、最後にまとめておきます。

  • 水封室;患者側への空気の逆流を防いでいる。シンクの下にある曲がったホースと同じ原理。
  • 吸引圧制御ボトルの役割:吸入圧を一定に保つこと。
  • リーク:胸腔内からドレーンバッグに空気が漏れている状態
  • 呼吸性移動:胸腔内の圧の変動がドレーンバッグに反映されている状態。

このあたりが分かれば、ドレーンバッグの対応はバッチリです。参考になった方は、明日からの仕事に活かしてみて下さい!

何となく分かった気もするけど、覚えられない。多分明日には忘れてる。

というわけで、クイズを用意してみました。

  • 胸腔ドレーンバッグの仕組み【クイズで学ぶ】

もっと気軽に見たい

もっと気軽に見られるよう、Instagramでも投稿しています。

  • Instagramでの投稿はこちらからご覧ください。

もっと得意になりたい

さらに得意になりたい人は、書籍で学んだり、適切な働く環境に身を置くことが大事です。どんな症例が経験できるか、まわりの人間関係などで、力がつけられるかは大きく変わります。

  • 呼吸器内科などを書籍で学びたい人は[呼吸器内科を学ぶのにオススメの本、9選【2021年版】]もご覧ください。
  • より呼吸器が学べる職場を見つけたい人は、[看護師転職サイトのランキング【結論:大手3サイト+自分の事情に合わせて】]にまとめてみたので、ぜひ参考にしてみてください。

この記事は[Up To Date / Thoracostomy tubes and catheters: Management and removal]も参照して書きました。

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