蓼食う虫も好き好き
一度は見てみたいムカシトンボおよそ春の中盤頃にかけて、渓流のような環境に出現するトンボの一種にムカシトンボというものがいます。
今回遭遇できたムカシトンボ。確かに探さないと出会えない名前が知られているだけはあるトンボ。名前を知る機会こそ多いものの、トンボのためにわざわざ足を運ぶのもなぁという怠け具合もあり、結局今年も見ないで終わる予定だったのですが、今回一緒に探索したトンボ好きの方のお陰でその姿を見ることができました。
なかなかユニークで面白いトンボだったのでその観察を記したいと思います。
- 一度は見てみたいムカシトンボ
- ターゲットはとんぼではなかった
- せっかくなら旬を求めて移動
- トンボたちとの遭遇
- 高尾山昆虫関連記事
この日はトンボ目当てではなくクリストフコトラカミキリとイボタガを目当てにして高尾を訪れました。
涎が出そうないい鮮度の材がたくさん。事前の予報では15時ぐらいまで晴れの予報だったのですが、まさかの午前中から曇り、夜にかけて雨ということで日差しが重要なクリストフと雨で飛来が見込めないイボタガが終了となります。
事前に良さそうと見込んでいたポイントへ足を運ぶと、いかにもクリストフが好みそうな鮮度の良い材が転がっており、近々再訪して初夏のタマムシ、カミキリムシ祭りとしてこちらも記事化する予定です。
まだ葉が緑のものもあり、クリストフを始め枯れ木性昆虫が絶対来るこのポイントでは本日はアカハネムシがやたらと見つかるだけでした。後日絶対虫が来るはずです。
アカハネムシ?はやたらと見つかった。ナガタマも発生は遅れているらしい。 せっかくなら旬を求めて移動日差しがない予定外の現実にどうしようかと悩むわけですが、時期的にムカシトンボがいるかも知れないとの助言をもらい、同時期のヒラヤマコブハナカミキリやウスバシロチョウなども求めて移動することに。
ムカシトンボは春の中旬から下旬頃に出現するトンボの仲間で、渓流的な環境に出現する面白いトンボです。
人工物だがいい感じ。苔むして沢という感じ。ちょうどそういう成分も補充していなかったので、湿った環境に生える植物なども求めて見ることにしました。
私は普段トンボを一切やらないのでこうした水辺環境に来ること自体、植物に熱心だった6年ぶりぐらいの出来事です。
沢沿いの雰囲気というのは常に水音が聞こえて心地良いですね。
早速環境へ入るといい雰囲気なのですが、曇っていてアゲハチョウを始めとする蝶の仲間はあまり見られません。
アリに運ばれたなにかの死骸?かと思いきや最初に目にしたのがこの白い変な生き物。この正体がなんと!
ウスバシロチョウの羽化不全でした。
ウスバシロチョウ自体は26日頃に出現を確認していたのですが、眼の前でしっかり確認するのは今日が初めてです。
結構新しい個体なだけに羽化不全なのは残念ですね。
ここでは紫色のお花がよく咲いていました。
平地では見ない植物。6年ぶりに見て歓喜。これはラショウモンカズラ。町中で目にするタツナミソウの仲間やカキドオシなどをかけ合わせたような植物で、沢沿いの近くでよく見つかります。
ついで目につくのがキケマン。
キケマンの仲間。何種類かあると言われる。ウスバシロチョウの食草であるムラサキケマンの黄色をした植物で、鮮やかさが目立ちます。
花弁が6枚あるちょっと珍しいやつ。沢沿いではニリンソウがまだ咲いており、今季の季節の進みの遅さを感じますね。
道を進み、記憶にある斜面に目を向けるとフタバアオイの姿がありました。
君も6年ぶり。随分群落が大きくなったような。徳川家の家紋で有名な植物ですよね。ウマノスズクサ科の植物で、高尾の林内にあるカンアオイなどが近い仲間です。
ちょうどお花も咲いていた。植物は知っていれば確実に見られていい。ヨゴレネコノメやネコノメソウかな?というこれぞ沢沿いという植物たちの観察を楽しみながら沢にトンボが飛んでいないか確認していきます。
やはり天気が悪いからか昆虫の出現はかなり悪く、それらしき生き物の飛来はありません。
6年前に見つけたカヤランの存命を確認しつつ引き続き沢を見ていきます。
少し開けた環境で日が差し込むとときおり昆虫が出てきます。
この日では珍しい少し大きなシルエットの姿を見てみると?
意外と見つからないやつ。これはヒゲコメツキですか。なかなか見かけることがない昆虫ですが、なかなか立派なヒゲを持っており魅力的な虫です。
♂の触覚が大きく立派になるようで、ここで♂に出会えたのは何かしらの運があるといえるのではないでしょうか。
そして道を歩いていると同行者が地上にいるトラフシジミを発見します!
トラフの春型!表には美しい青色の光沢がある人気種。トラフは今季何度か確認していたのですが、撮影器具があるのは今回が初めてです。このブログでは初めて春型トラフシジミの姿を収めることができました。 春型のトラフシジミには特有の模様が入っており、とても人気が高いシジミチョウなのです。
向きが悪く順光に回ろうとしたら飛ばれてしまいました。
トンボたちとの遭遇運気の周りを感じ沢沿いにしっかり目を向けてトンボ類を探していきます。
トンボを探すにはそれなりの採集経験が必要なんだなぁと沢を見て実感トンボ慣れしていない私をよそに、日頃からトンボを捕まえている同行の方が水際を飛んでいるなにかを目撃し、見事な網さばきでネットイン。 するとその網の中には...?
個人的に顔が可愛いダビドサナエ。
話によるとムカシトンボと近い環境で目にする事がある種類だそうです。
ダビドは小さいと聞いていましたが、実物を見てみるとかなり小さいんですね。
飛んでいるとイトトンボよりは大きいなぁくらい昔姿を見つけてネットインして、興味がなかったから調べなかったトンボの種類が今わかりました。
なかなか可愛い姿をしています。
ダビドを見つつ目を凝らし、トンボいないかなぁと見ていると視界に交尾をしている謎のトンボが入ってきます。
私にはダビドにしか見えなかったのですが、同行の方がここ一番の奮起を見せ、そのトンボを華麗にネットイン。
いやはやトンボ屋の網さばきはすごいものです。
その網の中にいたのが!
お腹の動きがすごい特徴的だったムカシトンボです。
思っていたよりも随分可愛らしい姿をしていますが、翅の大きさが前と後ろが同じで、写真のように持つと腹部をかなり跳ね上げて抵抗するのが他のトンボに見られない特徴でしょうか。
ハチみたいな動きでかなり驚きましたね。
ちょいブレですがシダの上でムカシトンボは今季の昆虫の出現の遅れの影響をかなり受けているのか個体数はずいぶん少ないようでした。加えてこのトンボは真偽は不明ですが成虫までに6~7年程度かかると言われています。
トンボの仲間の中でも相当遅い部類に当たるであろうこのトンボがこうして眼の前にいてくれたことに感謝したいですね。 こうした発生までに年月がかかる生き物の扱いは慎重になるべきですね。
未利用魚として成魚まで数年から10年以上もかかるウツボを消費する動きが出る中で、成魚まで時間がかかるウツボを取りすぎると資源再生には長い時間がかかるという話がトピックとしてありました。
見れれば満足。トンボは標本も難しいので。年数がかかる生き物に採集圧がかかると資源はあっという間になくなってしまう例として学びになるものだと考えていますが、ムカシトンボにおいても同じようなことが言えるのではないかと思います。
このムカシトンボが6~7年の月日を経て出てきているならば、私が6年前にやってきた時期に生まれたヤゴが今こうして成虫となって眼の前にいるわけです。
ある意味で6年ぶりの再開となった沢沿いの一員たち。知識が増えてムカシトンボという新顔にも出会えた。6年の月日の重さをその軽い体重で感じながら、この場所のムカシトンボが絶えず見られる環境であることを祈り、リリースしました。
その後同行者と二人で産卵に来ているムカシトンボを眺めてその地を去りました。
長い年月を生きてこの春の僅かな期間だけに出てくるムカシトンボは、子供の頃ならわからずとも大人になると月日の重みを感じさせてくれる良い昆虫でしたね。 pljbnature.com 次回は一気に夏へ。クワガタ編の開幕です。
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