無税国家論よりも重要な、財源不要のデジタル・ベーシックインカム論の理解:『デジタル・ベーシックインカムで日本は無税国家になる!』より-3
無税国家論よりも重要な、財源不要のデジタル・ベーシックインカム論の理解:『デジタル・ベーシックインカムで日本は無税国家になる!』より-3

無税国家論よりも重要な、財源不要のデジタル・ベーシックインカム論の理解:『デジタル・ベーシックインカムで日本は無税国家になる!』より-3

2022・23年考察

少しずつ、よくなる社会に・・・

先日、以下の記事で、ベーシックインカムに関する3冊の未読書を紹介。◆『ベーシックインカムへの道』『デジタル・ベーシックインカムで日本は無税国家になる!』等ベーシックインカム関連書3冊購入(20212/10/1)

1)『ベーシックインカムへの道 ―正義・自由・安全の社会インフラを実現させるには』(ガイ・スタンディング氏著・池村千秋氏訳、2018/2/10刊・プレジデント社)2)『ベーシックインカムから考える 幸福のための安全保障』(西野卓郎氏著、 2021/5/28刊、幻冬舎ルネッサンス新書)3)『デジタル・ベーシックインカムで日本は無税国家になる!』(苫米地英人氏著、2021/12/16刊、サイゾー社)

そしてこの中からページ数が少なく、興味関心が最も強かった苫米地英人氏著『デジタル・ベーシックインカムで日本は無税国家になる!』を読み終え、その内容を紹介するシリーズに着手。<第1回>:ベーシック・ペンションと苫米地氏デジタル・ベーシックインカムとの類似点:『デジタル・ベーシックインカムで日本は無税国家になる!』より-1(2022/10/7)<第2回>:日銀の通貨発行権によるQE量的緩和をベーシックインカムの財源に:『デジタル・ベーシックインカムで日本は無税国家になる!』より-2(2022/10/10)を投稿してきました。今回は、第3回最終回で、以下の構成からなる同書の<第2章><第3章>を取り上げます。

『デジタル・ベーシックインカムで日本は無税国家になる!』 目 次

まえがき第1章 ベーシックインカムで国民を救え ・2020年からのコロナ禍で起こったこと ・コロナ禍の特別定額給付金 ・浮上する「ベーシックインカム」待望論 ・ベーシックインカムは勤労意欲を減退させるのか? ・「ベーシックインカム導入で人は働かなくなる」は根本的に間違い ・財源はどうするのか? ・財源はどこにある? ・マネタリーベースと現金 ・QEを財源に第2章 消費を促す「デジタル半減期通貨」 ・半減期通貨で消費は活性化する ・半減期通貨というアイディアは昔からあった ・苫米地式「半減期通貨」のしくみ ・減ったお金はどこへ行くのか? ・ダイアスポラの通貨第3章 無税国家・日本への道 ・半減期通貨が無税国家を実現する ・想定される懸念への反論 ・「無税国家」は「財政ファイナンス」なのか? ・ベーシックインカムと無税国家で経済大国日本が復活する

第2章 消費を促す「デジタル半減期通貨」>から

第1章で、苫米地氏によるベーシックインカムは、QE量的緩和により、日銀が通貨発行権を用いて発行するデジタル通貨とし、税や保険料などの財源は必要ないとしていました。このことは、前回の記事◆ 日銀の通貨発行権によるQE量的緩和をベーシックインカムの財源に:『デジタル・ベーシックインカムで日本は無税国家になる!』より-2で触れました。

ドイツ人経済学者・実業家シルビオ・ゲゼル(1862-1930)による半減期通貨とその考え方

そのデジタル通貨ですが、その特徴が、支給されたベーシックインカムのうち、使わない通貨が日々価値が減っていき、1年後には半分に、2年後には4分の一になってしまうこと。貨幣(通貨)が減価せず、資産家が金利だけでいい生活をしていることを問題視し、貨幣を持ち続けていると定期的に減価するようにすればいいと発想。その減価を嫌がって持っている資産をどんどん使えば経済が活性化し、庶民にもお金が回るようになるということです。その時代にその考え方を具体化するために彼が考えたのが、紙幣の裏に有料スタンプを貼り付けないと使えない仕組み。いわば有料の印紙を貼ることが、元よりも価値が減った紙幣を使うことになるわけです。

ブロックチェーンを用いたデジタル通貨で半減期通貨の運用管理は簡単に

当時ならばそうした面倒な方法を必要としたわけですが、現代は、デジタル通貨を用いれば、ブロックチェーン技術を用いれば、毎日2の365乗根ずつ減少し、1年で半減する通貨の運用管理は簡単にできるというわけです。ただ、なぜ1年で半減なのか、1年で4分の三や一ではないのかという別案については、苫米地氏は語っていません。

毎月20万円(毎週5万円でも可)、半減期デジタル通貨を国民全員の電子マネー・ウォレットに配付

本書では、苫米地によるデジタル・ベーシックインカム通貨の支給額は毎月20万円。ウォレットは、スマホアプリや、政府が無償で配布する専用端末とし、その通貨は、円やドルなどの法定通貨や有価証券、貴金属など蓄財のための商品等との交換は不可能。基本は、蓄財できない消耗品、食料品、生活必需品、衣料、ライフラインの公共料金、賃貸住宅の家賃等、あるいは旅行やテーマパーク等のサービスに利用できるとしているのは、私が提案のベーシック・ペンションとほぼ同様であることは、本シリーズの第1回で述べました。

減価したお金は、日銀に回収され、国庫に納められ、国家の安定財源に

ベーシック・ペンションでは、最終的にすべて日銀に回収され、消化される(ゼロになる)としていますが、苫米地デジタル・ベーシックインカムは、減価した通貨は、まず日銀に自動的に送金・回収されます。その回収された通貨は、「国庫納付金」等の形で、国庫に納め、国の財源として用いるとしています。すなわち、1年で配付したデジタル通貨の半分、2年で初年度の金額の4分の三が国庫に入り、以後継続的に回収・納付が繰り返されることになります。苫米地氏は、この減価・回収されることは、「税金を支払う」ことと似ていると言います。現在の、消費することに対する罰金的な意味をもつ「消費税」に対して、「消費しないこと」に対する税金が、この減価部分と例えています。回収から国庫への納付は自動的に行われるため、経済活動や景気動向に左右されることのない政府の安定財源に。加えて、国庫に入った「半減期通貨」に限っては、減価を停止して、その分の価額が保存されるように予め決めておくことも考えられるわけです。

一人月額20万円年間総額300兆円を、QEとして日銀の信用創造でデジタル・ベーシックインカムとして支給

分かりやすく人口1億2500万人に対し、一人当り月額20万円を支給すれば、年間総額は300兆円。ベーシックインカムを日銀が、自らの通貨発行権により、デジタル通貨で発行し支給する。その半分、150兆円が、毎年国庫に財源として納められる。当面は、現状の各種税収等歳入にそれを加えて、国の財源に充てるというわけです。

ダイアスポラの通貨構想(省略)

この章の最後に、「ダイアスポラ」という国家や地域等の枠を超えて繋がるコミュニティ内において、苫米地氏が関与してのデジタル半減期通貨導入の検討案件が3例あるとしています。具体的にどういうダイアスポラかは極秘としているためイメージし難いので、ここでは省略します。

日本、世界中でデジタル半減期通貨が導入されることを望んでいるが、各国の官僚、政治家はおそらくすぐには動かないかもしれない。まずは、氏と関わりが深いダイアスポラで導入し、成功事例として世界に示すのが、普及への近道だと考えている。

ただ最後に、こう結んでいるのですが、それ自体雲をつかむような話であり、それがいつ頃この世に現れるのかも分からないため、デジタル半減期通貨構想の実現性そのものへの同氏の期待もさほどではないとしか思えないのが残念です。

第3章 無税国家・日本への道>から

第2章の括り方を考えると、次の最後の第3章の「半減期通貨が無税国家を実現する」という遠大なテーマも、夢想に近いのではないかと思わずにおれないのですが。しかし、一応、通貨発行権に基づくベーシックインカム発行方式を前提とすれば、考え方としては可能です。そして私の提案するベーシック・ペンションにおいても、同様の考え方を拡大解釈すれば、国が必要とするお金は、いくらでも発行できると解釈可能であり、その歯止めとなる基準や法律が必要であることにも触れています。

無税国家化が可能とするロジック

本章での苫米地氏の日本の国家財政とデジタル・ベーシックインカム(以下DBIとします)半減期通貨との関係での論理は、以下のようになっています。・過去の税収の最高額は2020年度の60.8兆円。・デジタル半減期通貨によるDBI発行額300兆円とすると1年後国庫への歳入が150兆円 ⇒ 過去最高額の倍以上に!・2年目以降のBI発行からの国庫納付分が加わり、さらに増加。・2021年度の国家の一般会計予算が106.6兆円 ⇒ あっという間にプライマリーバランス黒字達成!・すなわちこれ以上、政府は国民から税金を取る必要がなくなる ⇒ 無税国家・日本の誕生!

無税国家化による各種懸念への回答

加えて、こう説明します。・無税としたが、デジタル半減期通貨から強制的に日々、徴税していると解釈可能・国が徴税しないことで、円の信任がなされないリスクへの懸念は、その徴税機能とで解消されよう・あるいは、このデジタル通貨の大量発行で、円の信任低下や円安への大きな振れの可能性を指摘する声もあろうが、むしろ円安は輸出企業にとって大きな追い風、プラスに働き、日本経済全体に寄与し、内需拡大に繋がり、輸入価格の押し上げのマイナスも補って余りあるに違いない。・同様、過度なインフレ、バブルの再来の懸念も考えられるが、現状の日本経済の低迷を考えれば、過度の景気加熱はある程度まではウェルカム。・真に悪影響が出るような状況になりそうなら、半減期周期を短期化して通貨回収を迅速化、政府支出を減らして景気を抑制、期間限定で通常の通貨からの徴税の一時復活、金融政策での金利引き上げ等打つ手はいくらでもある。このあたりになると、私の提案するベーシック・ペンション(BP)での懸念に関する答えにも適用できそうになるのですが、それにしても、なんともあっけらかんとしています。

過度なインフレは起きない理由

もう一つ、BPでも懸念のインフレ対策に関しての苫米地論が見られるので、付け加えます。(この部分は、私も同感ですし、私なりの追加の考えを後日整理したいと思っています。)氏は、・過度なインフレは起こらないと考える。・DBI通貨は現実の「モノ(財やサービス)の消費にしか使えず、GDP向上に寄与する。・価格の高騰は、高需要・低供給の時に起きる。・BI導入当初の一定期間には、需要の高まりによって価格が高騰するケースもあるが、需要の高まりで、企業などは供給力向上に動き、供給安定化、価格引き下げ・価格競争・安定化に繋がる。・個別の商品での多少の変動があるとしても、国家経済全体としてのインフレ率が、さほど大きく変動することはないと考える。

日本を一つの地域とする需要供給自立可能型社会経済システムを

この他、バブル再来懸念についても、同様の視点で、対策・対応は可能であり、大きな懸念には及ばないとしています。なお、一つだけ私の考えを加えておくと、BPは日本という国限定の一種の地域通貨であり、地域循環経済の形成・維持を前提とした、自給自足型の需要供給体制を長期間かけて構築していくことを目標としています。すなわち、外的な要因からの影響を極小化出来る社会経済システムを構築した上で、グローバル経済と両立できる国家作りを掲げています。詳論は、当サイト及び https://2050society.com で展開していきます。

中央銀行日銀の通貨発行によるベーシックインカム給付とその原資による国庫化の違法性「財政ファイナンス」をめぐる議論

ちょっと分かりづらく書いてしまいましたが、本書・本章の最後の方に、苫米地式のDBI発行が、現状、政府が発行した国債を中央銀行が直接買い取ることを意味する「財政ファイナンス」であり、財政法第5条に違反するという指摘への苫米地氏の反論が展開されています。

その指摘に対し、同氏は「同法第4条は国債発行自体を禁じてはいるが、実際の条文には、例外を設けて、事実上国債発行を認めている」としています。また現実的には、異次元の量的緩和政策による「市場で国債を買い取る」というレベルを遥かに超えた「異次元」の買い取りは、直接買い取ったわけではないが、市場を使ってお金の迂回ルートを作り、中銀・日銀が発行した通貨を政府に渡しているようなもの」すなわち「財政ファイナンス」と言えるのでは、と論駁しているのです。戦争への反省と再発の歯止めとした財政法という事情は分かるが、ベーシックインカムが国民のための政策であるからには、その枷から解き放って考えるべきではないかという含みもあります。

この考えは、私のベーシック・ペンション提案においても参考にできるのではと感じています。少々長くなりました。

いきなり「ベーシックインカムと無税国家で経済大国日本が復活する」前にやるべきこと

「デジタル・ベーシックインカムで日本は無税国家になり、経済大国日本が復活する!」その道のりは、誰もが思う通り、簡単なことではありません。仮にそれらがセットで実現すれば、同氏は、累進課税もなくなり、低所得者も高所得者も、すべての人々の勤労意欲は高まり、生産性も高まる可能性が高いとします。そして過去を懐かしんで、強い日本経済復活を期待するのです。このあたりの単純性には「?」の感を強くしますし、「日本の政治家、政策担当者の方々の多くが・この仕組みを理解し、導入に向けて前向きに検討してくださることを願っている。」という結語には、かなりの無責任さを感じざるを得ません。ただ、彼らに強いインパクトを与えてくれれば、大きな一石を投じたことになってくれれば、と思うのですが、果たして、この小冊子が発行されたことそのものが伝わるかどうかさえ覚束ないと思うのです。せっかく手にしやすい比較的安価な冊子風の出版なのですから、斎藤幸平氏や成田雄輔氏の書のようにベストセラー書になれば、あるいはしてくれれば、と・・・。しかし、いくつかの点でベーシック・ペンション提案・展開の参考になりましたので、今後の整理・考察の中でうまく消化・活用できればと考えて、本シリーズを終えることにします。

次は、西野卓郎氏著『ベーシックインカムから考える 幸福のための安全保障』(2021/5/28刊、幻冬舎ルネッサンス新書)をシリーズ化して取り上げる予定です。

参考:「2022年ベーシック・ペンション案」シリーズ

<第1回>:ベーシック・ペンション法(生活基礎年金法)2022年版法案:2022年ベーシック・ペンション案-1(2022/2/16)<第2回>:少子化・高齢化社会対策優先でベーシック・ペンション実現へ:2022年ベーシック・ペンション案-2(2022/2/17)<第3回>:マイナポイントでベーシック・ペンション暫定支給時の管理運用方法と発行額:2022年ベーシック・ペンション案-3(2022/2/18)<第4回>:困窮者生活保護制度から全国民生活保障制度ベーシック・ペンションへ:2022年ベーシック・ペンション案-4(2022/2/19)

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