賢く生きるための勉強ノート
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目次

1、XRDとは 2、分析方法の種類とわかること 3、XRDの原理 4、XRDの装置 関連記事:

1、XRDとは

XRDとはX-Ray Diffractionの略称で、日本語では「X線回折法」または「X線構造解析」と呼ばれます。 試料にX線を照射した際、試料の電子によってX線が散乱・干渉して生じる回折を解析することで結晶構造情報を得る分析です。 X線とは波長の短い電磁波であり、X線回折に用いられる波長は0.5~3Å(10の-10乗)程度です。 波長が短いことで、分子・原子レベルの構造の持つ電子により散乱・干渉されその物質固有の回折(強度の増加)が起こるため、結晶の情報を知ることができます。 X線は試料表面の数百µmまでしか侵入しないため、X線回折法は物質表面の結晶情報を調べる分析です。 回折が生じるためには試料が結晶質でないとならないため、アモルファス(非晶質)な物質や気体・液体には適用できません。 そのため、対象となるのは主に無機物質であり、基本的には粉末や薄膜状態である必要があります。 (分析手法によってはコロイドやたんぱく質といった有機物も対象になります。) 分析を行うためには、粉末の場合は数g、薄膜の場合厚さ数nm以上の試料が必要になります。 粉末・薄膜にするために破壊することはありますが、測定自体は構造を破壊しない非破壊検査です。 また、結晶性にもよりますが、試料に5%以上含まれていないと含有物質として検出できないことがあります。

類似分析方法との比較 回折現象を利用する類似した結晶構造解析方法に電子線回折法と中性子回折法があります。

電子線回折法

電子線回折法はED (Electron Diffraction) とも呼ばれます。 物質に電子ビームを照射した際に、生じた干渉パターンを観察することで、物質の対称性(周期的構造)を分析する方法です。 回折パターンから結晶格子(ブラベ格子)を決定することができ、回折強度を精密に測定することで結晶構造を推測することもできます。 電子回折では結晶体が厚いと多重散乱するため有効性は限定的であるものの、X線回折ではできない結晶体の対称中心の有無を決定することができます。

中性子回折法

中性子回折法はND(Neutron Diffraction)とも呼ばれます。 核分裂によって得られた中性子線を照射して、生じた回折現象を解析して、物質の結晶構造や磁気構造を決定する方法です。 中性子線の場合は原子核が回折の障害物となるため、波長を原子核間距離と同程度にすることで結晶構造解析を行うことができます。 エネルギー量がX線よりも大きく、X線は結晶表面から数μm~1mm程度侵入するのに対し、中性子線は数mm~数十mm侵入していきます。 そのため、結晶内部の配列や磁気構造を知ることができます。 また、X線回折は電子が少ない低分子量の試料では分析できないですが、中性子回折は低分子量物質の解析も可能です。 さらに、原子核が回折障害物になることにより、同位体の判別も行うことができます。

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2、分析方法の種類とわかること

X線回折法には、試料の状態や測定の目的に応じた手法が多数存在します。 大まかな分析手法とその結果からわかることを紹介します。 ・粉末X線回折 ・単結晶X線回折 ・残留応力解析 ・薄膜解析(微小角入射) ・X線小角散乱法

粉末X線回折

粉末X線回折でわかること 構成成分の同定 構成成分の定量 結晶サイズ 結晶化度

粉末X線回折とは、粉末のように多数の単結晶の集合と考えられる試料をX線回折測定することをいいます。 粉末X線回折で得られる回折X線強度は、それぞれランダムな方向を向いた多数の単結晶からの回折の総和となるため、試料を均一な細かい粒子にする必要があります。 既知物質に関しては入射角と回折強度がデータベース化されているため、得られたデータとデータベースを照らし合わせることで未知試料の同定を行うことができます。 なお、データベースに無い試料でもリートベルト法により構造解析することで構造を決定できる場合があります。 X線回折像のピーク強度は結晶の量を反映しているため、成分の存在比率を定量することができます。 X線回折像の線幅は結晶の大きさを反映しているため、半値幅のデータとシェラーの式を用いて結晶子サイズを算出できます。 X線回折像にハローパターンが見られる場合、全ピーク面積に対する結晶成分のピーク面積の比から結晶化度を算出することができます。

単結晶X線回折

単結晶X線回折でわかること 分子の三次元構造

単結晶X線回折とは、試料の単結晶を作成してX線回折を測定することいいます。 単結晶X線回折を行うには、測定対象物質の適切な結晶を作製する必要があります。 0.1 mm四方以上の大きさと、ある程度の純度をもち、大きな欠陥のない規則的構造を持った結晶が理想的です。 結晶を得られたら3次元構造の把握のために結晶の全方向に対してX線を照射するため、膨大なデータ量となります。 データは化学的な補助情報と合わせてコンピュータで解析して、結晶中の原子配列モデルを作成し精密化します。 なお、散乱強度からは位相はわからないため、重原子を用いたり、X線の波長を変化させたり、位相を仮定して矛盾が無くなるまで計算するといった方法で位相を決定します。 結晶に亀裂が生じていたり双昌成長が生じていると、分子構造の決定が困難になるため注意が必要です。

残留応力解析

残留応力解析でわかること 残留応力 内部の歪み

残留応力解析とは、任意のX線回折法により得られたデータから、曲げ等による材料の表面にの残留応力や歪みを分析することをいいます。 材料に応力が負荷されると、材料中の結晶の格子面間隔が伸縮します。 格子面間隔が変化すると、X線回折ピークが現れる回折角(2θ)がずれるため、このずれ(シフト)量から歪みを読み取ることが出来ます。 求めた歪みと材料固有の弾性定数を元にして、残留応力を求めることができます。 なお、固溶体によってもピークはシフトします。

薄膜解析(微小角入射)

薄膜解析でわかること 密度 結晶性 結晶軸の方向 結晶の周期

薄膜解析(微小角入射)は基板上に蒸着した薄膜に微小角でX線を照射する分析です。 薄膜は非常に薄いため、試料に対する X 線の入射角度をおよそ 1°以下に固定し、検出器の角度(2q)だけを変化させて分析します。 データから得られた全反射が終わる角度で密度を推測することができます。 また、検出器を基板面と水平に回転移動させて基板に垂直な結晶面を評価することで、面内配向性や単結晶基板との方位関係を知ることができます。

X線小角散乱法

X線小角散乱法でわかること ナノスケール結晶のサイズ ナノスケール結晶の形状 ナノスケール結晶の粒度分布

X線小角散乱法は、溶媒やゲルに分散した微小試料に対しX線を照射し、10度以下の低角に現れる散乱したX線を分析する方法です。 対象は数nm~数十nmの微細な粒子です。 得られた散乱強度パターンから、慣性半径、最大長、粒度分布を求めることができます。

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3、XRDの原理

結晶のように原子が周期的に配列している物質に、原子の間隔と同程度の波長を持つX線が入射すると、各原子に所属する電子によりX線が散乱されます。 散乱したX線は干渉し合い、打ち消しあったり、特定の方向で強め合う回折という現象を引き起こします。 回折が起こる角度は決まっていて、次のブラッグの式を満たす方向でのみ回折が起こります。

物質によって結晶構造は決まっており、それぞれ固有の回折ピークが得られるため、既知の物質であればある角度からX線を照射すると回折によってどれくらいの強度の散乱X線が反射してくるかがデータベース化されています。 このように、XRDは回折現象を利用して得られたピークをデータベースと照合することで物質の同定や歪みの確認を行っています。 なお、同じ組成の物質でも結晶構造が異なる形態が存在する場合は、結晶構造ごとに異なる回折ピークが得られるため区別可能です。

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4、XRDの装置

XRDを測定する装置について簡単に紹介します。 X線回折計はX線発生部、試料室、検出部の3つで構成されます。

X線発生部

X線発生部では陰極で発生させた熱電子を対陰極(陽極)の金属に衝突させてX線を発生させるX線管球が使用されます。 ブラッグの式を成り立たせるために、発生したX線はフィルターに通して単一波長のみを試料室に導入します。 なお、X線管球は使用後高温になるため、冷却を行わないと発火する恐れがあります。

試料室

照射されるX線を受ける試料を置く空間ですが、通常ゴニオメーターという機械が導入されています。 ゴニオメーターとは、試料を回転させたり、角度を変えることでX線の入射角を制御する装置です。 装置によりますが、検出部も試料に合わせて連動することで広角の回折データを得ることができます。

検出部

検出部には比例計数管やCCD検出器が用いられており、回折によって生じた電離放射線の数やエネルギーを測定します。 こうして得られた回折データをデータベースと照合して分析を行います。

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