14億人のトップ習近平の栄光と孤独 謀殺に脅える「異常な警戒心」 初めて明かされる素顔(上)
2015.04.05- #雑誌
週刊現代
講談社
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性格は孤独でネクラ。猜疑心が強く、権力闘争にひときわ敏感で、政敵は容赦なく粛清していく—。このほど終了した全国人民代表大会で、隣国の独裁者の無慈悲で不安げな「素顔」が見えてきた。
自らの護衛責任者も更迭「両会」—中国では、国会にあたる全国人民代表大会(全人代)と、政府への唯一の諮問機関である中国人民政治協商会議(政協)を合わせて、こう呼ぶ。日本で言えば、衆議院と参議院に近い存在だ。
「両会」は一年で3月前半しか開かれない。今年の全人代は3月5日から15日まで、政協は3日から13日まで、それぞれ北京の人民大会堂で開かれた。
その「両会」の開幕直前、天安門広場の北西に広がる最高幹部の職住地「中南海」で、異変が起こった。中南海に住む最高幹部たちの護衛を担当する中国共産党中央弁公庁警衛局(中央警衛局)で、習近平主席の護衛責任者を務める曹清局長(人民解放軍中将・63歳)が突如、解任されたのだ。
-AD-その理由について、「両会」代表の一人が明かす。
「曹清局長は、1976年に毛沢東夫人の江青ら『四人組』を電撃逮捕したことで名を馳せた人物です。その後、胡錦濤前主席に目をかけられて、'07年9月に胡錦濤主席を警護する中央警衛局長に抜擢されました。
2年前に国家主席を引き継いだ習近平は、そんな曹清局長を信頼できなかった。習近平は昨年末に、『胡錦濤の分身』と言われた最側近の令計画・党統一戦線部長を引っ捕らえており、その件で胡錦濤は習近平に対して、はらわたが煮えくり返っている。そのため習近平は、胡錦濤が気心の知れた曹清を焚きつけて、自分に銃を向けてくるのではないかと、気が気でなかったのです。
そこで、曹清よりは信頼できる王少軍副局長(少将・60歳)を局長に抜擢した。曹清は、北京軍区の副司令員に横滑りさせ、体よく中南海から追い出したというわけです」
全人代の代表でもある曹清中将は、3月5日に人民大会堂に現れた。だが、終始顔を曇らせ、記者の直撃取材にも無言だった。
しかし、自分の警護団のトップをクビにしても、習近平主席の動揺は収まらなかった。米ノースカロライナ州に本部を置き、米政府からバックアップを受けている亡命中国人団体のサイト「博訊ネット」は3月4日、北京で起こったばかりという衝撃的なニュースをスッパ抜いた。
〈中央警衛局の一部が3日、クーデターを起こし、習近平政権の転覆を謀った。クーデターによって、習近平や王岐山(習近平側近で共産党序列6位)らを軟禁する計画だった。だがこの計画は、人民大会堂にいた習近平主席に、事前に伝わってしまった。そのため習主席は、直ちに北京軍区を出動させた。
これによって、クーデターは未遂に終わった。怒り心頭の習近平主席は、300人以上の中央警衛局員たちを、厳重な取り調べの対象とした〉
毒見係を引き連れてこうした状況を受けて、今年の「両会」は、かつてないほどの厳戒態勢の中で行われた。前出の代表が証言する。
-AD-「顔の知れたわれわれ『両会』の代表たちでさえ、人民大会堂に入るために、3回もの厳しい身体検査を受けないといけなかった。習近平主席の周囲には、王少軍新局長ら数十人が常に張りついて、異様な警備態勢でした。
習近平主席が各省の会議に参加する際には、直前に主席が座る椅子やテーブルを入念に検査し、主席に出されるお茶は毒見までしていました。習主席が人民大会堂の表玄関から外へ出てくる時は、待ち受けた数百人規模の警備員たちを退去させ、代わりに中央警衛局員たちに入れ替えていました」
万事のんきだった胡錦濤時代には考えられなかったものものしさだ。今回の「両会」で見えてきたのは、習近平主席が正真正銘の「皇帝」となってきたことだった。
本来、全人代で主役を務めるのは、中央官庁の国務院を統轄する李克強首相のはずである。実際、習近平主席に次いで中国共産党の序列ナンバー2である李克強首相は、全人代の開幕日に1時間40分の政府活動報告を行い、15日の閉幕日には年に一度の記者会見に臨んだ。
だが、李克強首相の存在感は薄かった。「両会」を取材したジャーナリストの李大音氏が語る。
「政府活動報告では、全人代の代表たちが大勢、居眠りしていました。記者会見では、『この人に聞いても権限がないので意味がない』と、記者たちがシラけきっていた。李首相もそんな雰囲気を察知して、『君たちももうお腹が空いたでしょう』と言って、早々に切り上げてしまいました」
李克強首相は、歴代首相の中で、「最弱の首相」になりつつある。それというのも習近平主席が、共産党のトップに立ってから2年4ヵ月、国家主席に就いてから2年で、すべての権限を自分に集中させるシステムを構築したからである。
現在、習近平の肩書は、国家主席、共産党中央総書記、中央軍事委員会主席、国家安全委員会主席、中央全面深化改革指導小グループ長、中央インターネット安全情報化指導小グループ長、中央軍事委国防軍隊深化改革指導小グループ長、中央財経指導小グループ長……と、数多い。
「習近平が手本にしているのは、毛沢東とプーチンです。14億の国民を支配する完全独裁体制を敷くことを目標にしているのです。加えて、昨年11月の北京APECを成功させ、自らが主導して設立するアジアインフラ投資銀行(AIIB)に英仏独が参加の意向を示したことで、『アジアの盟主』になる野望の実現も見えてきた」(同・李氏)
圧倒的権力を掌中にした習近平主席は「汚職幹部追放」の名の下に、日々政敵たちの粛清に邁進しているのである。
-AD-前出の「両会」代表が言う。
「中国には最近、『午後6時の男』という隠語があります。王岐山書記が率いる党中央紀律検査委員会のホームページで、午後6時頃に『本日失脚させた官僚』が発表されるからです。昨年だけで696人もの幹部が掲載されましたが、今年はさらに増加しています」
みんなが恐れ、ひれ伏すこの代表によれば、いまや全国の富裕層の人々も、習近平に脅える日々だという。
続きは「習近平その栄光と孤独(下)」をご覧ください
「週刊現代」2015年4月4日号より
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