『牛をつないだ椿の木』あらすじと感想【見失ってしまいやすいことに気づかせてくれる】
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【『名作』一覧】童話や文学、戯曲など【海外と日本の有名作品集】

童話:『牛をつないだ椿の木』のご紹介です。

新美南吉童話集 (岩波文庫 緑 150-1) created by Rinker 岩波書店

あらすじは読み聞かせができるようにまとめています。参考にして下さいませ。

このページでわかること
  1. 『牛をつないだ椿の木』のあらすじ
  2. 読み終わった感想
  3. 参考文献

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『牛をつないだ椿の木』のあらすじ

まずはあらすじと作者紹介です。

スポンサーリンク 物語:旅人のため?それとも自分のため?

山道やまみちの脇わきの椿つばきの若わか木ぎの根ね元もとに、利り助すけさんが牛うしをつなぎ、海蔵かいぞうさんは人力車じんりきしゃを置おいて、山やまの奥おくへと湧わき水みずを飲のみに行いきました。

冷つめたい水みずをたっぷり飲のんで戻もどってくると、牛うしが椿つばきの葉はをみんな食たべてしまっていて、この土地とちの地じ主ぬしがかんかんに怒おこっています。

海蔵かいぞうさんは思おもいました。

 

「もっと道みちの近ちかくに水みず飲のみ場ばがあれば、たくさんの人ひとたちが助たすかって良よいのに…」

 

普ふ通つうの井戸いどなら三さん十じゅう円えん*あればつくれるそうですが、海蔵かいぞうさんの家いえは貧まずしく、とてもそんな大金たいきんは出だせません。

海蔵かいぞうさんは利り助すけさんに相談そうだんしました。

ですが、利り助すけさんはみんなのためにお金かねを出だす気きはまったくないようです。

 

そこで翌日よくじつ、海蔵かいぞうさんは椿つばきの木きの下したに、賽銭箱さいせんばこのようなものを用よう意いします。

札ふだにはこう書かいておきました。

『ここに井戸いどを掘ほって旅人たびびとに飲のんでもらおうと思おもいます。志こころざしのある方かたは一銭いっせん*でも五ご厘りん*でも入いれて下ください』

 

ところが、誰だれもお金かねを入いれてはくれません。

海蔵かいぞうさんは、一人ひとりで頑がん張ばるしかないと覚かく悟ごを決きめ、お菓子かしを買かうのも我が慢まんして、ひたすら節約せつやくを続つづけました。

 

それから二に年ねん経たち、ようやく井戸いどをつくるお金かねが貯たまります。

しかし、地じ主ぬしは井戸いどを掘ほることを許きょ可かしてくれません。

海蔵かいぞうさんが何なん度目どめかのお願ねがいに地じ主ぬしの家いえを訪たずねると、地じ主ぬしの老人ろうじんは、しゃっくりが止とまらず、体からだが弱よわって床とこについていました。

帰かえりがけ、老人ろうじんの息子むすこが来きてこう言いいました。

 

「もう間まもなく、頑がん固こな親父おやじが死しんで、私わたしの代だいになったら、井戸いどを掘ほることを認みとめてあげましょう」

海蔵かいぞうさんは、内心ないしん喜よろこびました。

 

ところが、海蔵かいぞうさんは家いえに帰かえって母親ははおやにその話はなしをしたところ、次つぎのことを指し摘てきされます。

「自じ分ぶんのことばかり考かんがえて、人ひとが死しぬのを待まち望のぞむなど悪わるいことだ」

海蔵かいぞうさんは、それを聞きいてはっとしました。

 

翌朝よくあさ、海蔵かいぞうさんは再ふたたび地じ主ぬしの家いえへ行いき、正しょう直じきに自じ分ぶんの気持きもちを話はなします。

手てをついて老人ろうじんに謝あやまりました。

すると老人ろうじんは、そんな海蔵かいぞうさんの立りっ派ぱな心こころ持もちに感心かんしんし、井戸いどを掘ほることを認みとめてくれました。

しかも、「もし費ひ用ようが足たりなかったら自じ分ぶんが出だしてあげる」とまで言いってくれました。

 

こうして、椿つばきの木きのそばには新あたらしい井戸いどができました。

学校帰がっこうがえりの子こ供どもが美味おいしそうに水みずを飲のんでいるのを見みて、海蔵かいぞうさんも水みずを飲のみながら思おもいます。

 

「もう思おもい残のこすことはない。こんな小ちいさな仕し事ごとだが、人ひとのためになることを残のこすことができたのだから」

 

その後ご、海蔵かいぞうさんは戦争せんそうに行いき、そのまま帰かえって来きませんでした。

ですが、海蔵かいぞうさんがした仕し事ごとは、今いまでも生いき続つづけています。

道みちで疲つかれた人々ひとびとの喉のどを潤うるおし、元げん気きを与あたえているのです。

そして人々ひとびとはまた、道みちを進すすんで行いくのであります。

(おわり)

ーーーーー

[用よう語ごの説明せつめい]

*三さん十じゅう円えん:現在げんざいの価値かちで約やく60万円まんえん

*一銭いっせん:現在げんざいの価値かちで約やく200円えん

*五ご厘りん:現在げんざいの価値かちで約やく10円えん

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スポンサーリンク 作者:新美南吉

作者:新美にいみ南吉なんきち(1913~1943年)

現在の愛知県半田市に生まれた後、児童文学作家として活躍。

子供の頃から創作活動に意欲的で、半田中学校に在学していた14歳の頃から、童話や童謡、小説、詩、俳句、劇作などの創作をしていました。

十四歳の頃から、童話や童謡を盛んに創作し始めた。

(『もう一度読みたい 教科書の泣ける名作』20ページ 新美南吉 より)

その後、半田小学校の代用教員をしながら、復刊した児童雑誌:『赤い鳥』に投稿。童話4編、童謡23編が掲載されます。

上京して東京外国語学校を卒業してからは、安城高等女学校で教員などの仕事をしながら、数々の作品を発表し続けました。

作品:1,500を超える作品を残した

(前略)童話の他、童謡、小説、戯曲、詩、俳句、短歌など、千五百を超える作品を残した。

それは、創作を始めたのが早かったおかげといえよう。

(『もう一度読みたい 教科書の泣ける名作』20ページ 新美南吉 より)

その他の代表作の一部

当サイトでご紹介させていただいたその他の代表作の一覧です。

>>ごんぎつね

>>手袋を買いに

>>でんでんむしのかなしみ

>>二匹のかえる

>>花のき村と盗人たち

>>おじいさんのランプ

>>赤いろうそく

作風:善意溢れる詩情を讃えた作

庶民の子どもの生活や喜び、悲しみを、物語のなかにたくみにとけこませて、ユーモアのある独特な語りくちで、清潔で善意あふれる詩情をたたえた作である。 (『学習人物事典』332ページ より)

評価:1960年代に評価され始めた

生前にはあまりみとめられなかったが、1960年代にいたって評価されはじめ、『新美南吉全集』全8巻が出版された。 (『学習人物事典』332ページ より)

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『牛をつないだ椿の木』への感想

最後は感想です。

スポンサーリンク 見失ってしまいやすいことに気づかせてくれる物語でした

かつてノーベル物理学賞を受賞した物理学者:アインシュタインは、学生からの「人間は何のために生きているのですか?」という問いに対し、こう答えたと言われています。

 

「他人の役に立つためです。そんなことがわからないんですか?」

個人的にこの童話は、そんな『人が見失ってしまいやすいことに気づかせてくれる物語』だったように思いました。

童話に登場する海蔵は、母からの助言をきっかけに、「自分の目的のため、他人の不幸を願うべきでない…」とのことに気づきます。

そこで海蔵は地主に、「井戸をつくることでたくさんの人を助けたい…!」との正直な気持ちを伝えたことなどで、停滞していた物事が好転していきました。

もちろん現実にはこの童話のようにうまく物事が好転するとは言い切れません。

ですが、少なくとも自分はこの童話を通じて、そんな人が見落としがち…もしくは見失いやすいことに改めて気づかされた気がしています。

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『牛をつないだ椿の木』あらすじと感想まとめ

童話:『牛をつないだ椿の木』は、登場人物の海蔵が、旅人のために水飲み場をつくろうと尽力するあらすじです。

とはいえ、そのあらすじは決して一義的なものではなく、人の価値観のようなものが問われるかのような内容だったように感じました。

スポンサーリンク 参考文献

>>新美南吉童話集

>>【青空文庫】牛をつないだ椿の木

>>小・中学校の教科書にでる学習人物事典

>>もう一度読みたい 教科書の泣ける名作

>>童話学がわかる

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2024年3月2日 【『名作』一覧】童話や文学、戯曲など【海外と日本の有名作品集】

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