枕草子『中納言参りたまひて』品詞分解/現代語訳/解説
枕草子『中納言参りたまひて』品詞分解/現代語訳/解説- 2022.02.05
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- 1. はじめに
- 2. 出典について
- 3. 中納言参りたまひて、御扇奉らせたまふに、
- 4. 「隆家こそいみじき骨は得てはべれ。それを張らせて参らせむとするに、
- 5. おぼろけの紙はえ張るまじければ、求めはべるなり。」
- 6. と申したまふ。「いかやうにかある。」と問ひきこえさせたまへば、
- 7. 「すべていみじうはべり。『さらにまだ見ぬ骨のさまなり。』
- 8. となむ人々申す。まことにかばかりのは見えざりつ。」と、
- 9. 言高くのたまへば、「さては、扇のにはあらで、
- 10. くらげのななり。」と聞こゆれば、「これは隆家が言にしてむ。」とて、笑いたまふ。
- 11. かやうのことこそは、かたはらいたきことのうちに入れつべけれど、
- 12. 「一つな落としそ。」と言へば、いかがはせむ。
はじめに
こんにちは!こくご部です。
定期テスト対策から大学受験の過去問解説まで、「知りたい」に応えるコンテンツを発信します。
今回は枕草子『中納言参りたまひて』について、できるだけ短い固まりで本文⇒品詞分解⇒現代語訳の順で見ていきます。
必要に応じて解説も記しておきます。
古文が苦手な人や食わず嫌いな人もいるかもしれませんが、一緒に頑張りましょう🔥
それでは行ってみましょう!
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まずは出典の『枕草子』について触れておきましょう。
出典★作者について 作者は清少納言。一条天皇の中宮定子に仕える(紫式部が仕えたのは中宮彰子)。父は清原元輔。
★ジャンルについて 随筆文学。『枕草子』の内容は以下の3つに大別される(諸説あり)。①類聚的章段(「〇〇は~」「〇〇なもの」で始まるもの)②日記的章段(実際に作者が経験した事象について描かれたもの)③随想的章段(諸々の事象についての感想を述べたもの)
★成立について 平安時代中期。
★敬語について 『枕草子』のうち、特に清少納言の過ごした宮廷社会を描いた場面では敬語に着目して「誰が主語になっているか」を見極めることが重要。清少納言の仕えた中宮定子、一条天皇に対しては二重尊敬が用いられることがほとんど。また、通常の尊敬語が用いられている場合は上記の二人以外の貴人が主語であることが多く、敬語が用いられていない場合は作者自身や周囲の女房たちが主語である可能性が高い。
中納言参りたまひて、御扇奉らせたまふに、
中納言 名詞 ここでは藤原隆家(中宮定子の弟)を指す。参り 動詞★重要単語ラ行四段活用動詞「参る」の連用形。「参る」は「行く」「来」の謙譲語である「参上する」という意味のほか、「御」+名詞+「参る」などの形で高貴な身分の人物に対して「(何かをして)差し上げる」という「与ふ」「す」の謙譲語、さらに「食ふ」「飲む」の尊敬語である「召し上がる」の意味がある。判別には文脈判断が必要になるが、まずは最初の「参上する」を当て、不自然であれば他の訳をあてていく。ここでは「参上する」という意味で、作者から、「参る」という行為の受け手である中宮に対する敬意。たまひ 動詞ハ行四段活用動詞「たまふ」の連用形。「給ふ」は四段活用と下二段活用があり、前者が尊敬語、後者が謙譲語であるので注意が必要。この場合は尊敬の補助動詞であり、「お~なる」、「~なさる」という意で、作者から「参る」という行為の主体である中納言に対する敬意。て接続助詞御扇名詞仮名表記では「あふぎ」となる。その用途は涼むため以外にも多岐にわたり、観賞用や催事用、贈答用など。電撃的な出会いをして手にした扇に和歌を書き上げ相手に渡す、といったことも多々あり、ある種のキーアイテム的な役割を果たす。奉らせ(動詞)サ行下二段活用動詞「奉らす」の連用形。ここでは「差し上げる」の意味。「奉る」+使役・尊敬の助動詞「す」から成る。使役・尊敬の助動詞「す」は謙譲語について、謙譲語のもつ尊敬の念を深めるのに用いることがある。この場合は作者から、「奉る」という行為の受け手である中宮に対する敬意。たまふ 動詞ハ行四段動詞「たまふ」の連体形。ここでは作者から、「奉る」という行為の主体である中納言に対する敬意。に格助詞 中納言(藤原隆家。中宮定子の弟。)が参上なさって、御扇を(定子に)差し上げなさるときに、「隆家こそいみじき骨は得てはべれ。それを張らせて参らせむとするに、
隆家 名詞 こそ 係助詞 強意の係助詞いみじき形容詞 シク活用の形容詞「いみじ」の連体形。「はなはだしい」のほか、「すばらしい」「ひどい」の意味を持つ。現代語の「ヤバい」と同じで、プラス・マイナスの両面のニュアンスがあることを念頭に置いておきたい。骨名詞は係助詞強意の係助詞得動詞ア行下二段活用動詞「得(う)」の連用形。活用語尾と語幹の区別がなく、その語全体の形が変わってしまう特殊な語。(え、え、う、うる、うれ、えよ)同じ活用をするものとして、覚えておきたいのは主に以下の2つ。「寝(ぬ)」⇒ね、ね、ぬ、ぬる、ぬれ、ねよ「経(ふ)」⇒へ、へ、ふ、ふる、ふれ、へよて 接続助詞はべれ動詞ラ行変格活用動詞「はべり」の已然形。本動詞として「仕ふ」の謙譲語、「あり」「をり」の丁寧語の意味があり、補助動詞として丁寧の補助動詞の意味がある(「さぶらふ」と同じと考えてよい)。見分けるポイントとしては「はべり」の前に身分の高い人を表す語があるかどうか。ある場合は「(貴人に)お仕えする」の意味に、ない場合は「(人や物などが)あります」の意味になる。この場合は会話文で使用されていることから、話し手である中納言から聞き手である中宮への敬意を表している。なお、ここでは「こそ」を受けて係り結びが成立している。 「私はすばらしい(扇の)骨を手に入れてございます。それを張らせて差し上げようと思うのですが、おぼろけの紙はえ張るまじければ、求めはべるなり。」
おぼろけ 形容動詞 ナリ活用の形容動詞「おぼろけなり」の語幹。「おぼろけなり」はもともと「並一通りである」「ありふれている」などの意味であったが、否定語を伴う用法が主であったことから「おぼろけなり」という語そのものが「並一通りではない」の意味となったとされている。★形容詞・形容動詞の語幹の用法についてまとめておく。①接尾語を伴い別の品詞をつくる例⇒形容詞の語幹+「げなり」=形容動詞 形容詞の語幹+「さ」「み」=名詞 形容詞の語幹+「がる」=動詞②連用修飾語(〇〇が××なので と訳す)になる例⇒名詞(体言)+「を」+形容詞の語幹+「み」 ex.「瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の~」③格助詞「の」を伴い連体修飾語になる例⇒ex.「をかしの御髪や。」④単独または感動詞を伴い、意味を強める例⇒ex.「あなめでたや。」の格助詞紙名詞 は係助詞強意の係助詞 え副詞★重要文法後ろに「打消」を伴って「不可能」の意味を表す。張る動詞ラ行四段活用動詞「張る」の終止形まじけれ助動詞打消推量の助動詞「まじ」の已然形ば接続助詞★重要文法接続助詞の「ば」は以下の2パターンを整理しておきたい。①未然形+「ば」 ( 未だ然らず、つまりまだ出来事が起きていない)⇒仮定(もし~ならば)②已然形+「ば」 (已に然り、もうその状態になっている)⇒(ⅰ)原因・理由(~なので)(ⅱ)偶然(~したところ)(ⅲ)必然(~するといつも)求め動詞マ行下二段活用動詞「求む」の連用形はべる動詞ラ行変格活用動詞「はべり」の連体形。この場合は会話文で使用されていることから、話し手である中納言から聞き手である中宮への敬意を表している。なり助動詞断定の助動詞「なり」の終止形 並一通りの紙は張れそうにないので、(それ相応の紙を)求めているところでございます。と申したまふ。「いかやうにかある。」と問ひきこえさせたまへば、
と 格助詞 申し動詞サ行四段活用動詞「申す」の連用形。本動詞として「言ふ」の謙譲語の「申し上げる」のほか、謙譲の補助動詞としての用法がある。ここでは作者から、「申す」という行為の受け手である中宮に対する敬意。たまふ動詞ハ行四段動詞「たまふ」の連用形。ここでは作者から、「奉る」という行為の主体である中納言に対する敬意。いかやうに形容動詞ナリ活用の形容動詞「いかやうなり」の連用形か係助詞疑問の係助詞。ある動詞ラ行変格活用「あり」の連体形。係助詞「か」を受けて係り結びが成立している。と格助詞問ひ動詞ハ行四段活用「問ふ」の連用形きこえ動詞★重要単語ヤ行下二段活用動詞「きこゆ」の已然形。「聞こえる」「評判になる」「分かる」などの一般動詞としての用法と、「言ふ」の謙譲語である「申し上げる」、謙譲の補助動詞である「お~申し上げる」の用法がある。謙譲語としての「聞こゆ」は、直前に動詞があるかどうかで意味を判別する必要がある。ここでは作者から、「問ふ」という行為の受け手である中納言に対する敬意。させ 助動詞尊敬の助動詞「さす」の連用形。ここでは作者から、「問ふ」という行為の主体である中宮に対する敬意。たまへ 動詞ハ行四段動詞「たまふ」の已然形。ここでは作者から、「問ふ」という行為の主体である中宮に対する敬意。ば接続助詞★重要文法①未然形+「ば」 ( 未だ然らず、つまりまだ出来事が起きていない)⇒仮定(もし~ならば)②已然形+「ば」 (已に然り、もうその状態になっている)⇒(ⅰ)原因・理由(~なので)(ⅱ)偶然(~したところ)(ⅲ)必然(~するといつも) と申し上げなさる。「(それは)どのような様子か。」とお尋ね申し上げなさると、「すべていみじうはべり。『さらにまだ見ぬ骨のさまなり。』
すべて 副詞 「総じて」「まとめて」などの意味のほか、打消を伴って全否定(まったく~ない)の用法を押さえておきたい。ここでは「総じて」の意味。いみじう形容詞シク活用の形容詞「いみじ」の連用形のウ音便形。はべり動詞ラ行変格活用動詞「はべり」の終止形さらに副詞 現代語と同じ「そのうえ」「いっそう」の意味もあるが、古文で重要なのは打消を伴って全否定(まったく~ない)の用法。まだ副詞見 動詞マ行上一段活用動詞「見る」の未然形。上一段動詞は基本的には10語のみと数に限りがあるため、頭文字を取って「ひいきにみゐる」で確実に暗記しておくこと。ぬ 助動詞打消の助動詞「ず」の連体形骨名詞の格助詞 さま名詞 なり助動詞断定の助動詞「なり」の終止形 「すべてにおいてすばらしいのです。『全くこれまで見たことのない骨のようだ。』となむ人々申す。まことにかばかりのは見えざりつ。」と、
と 格助詞 なむ 係助詞強意の係助詞。人々名詞申す動詞サ行四段活用動詞「申す」の連体形。係助詞「なむ」を受けて係り結びが成立している。まことに副詞かばかり副詞の格助詞は係助詞見え動詞ヤ行下二段活用動詞「見ゆ」の未然形。「見える」「思われる」「見られる」「結婚する」など様々な意味があるが、「見ゆ」の「ゆ」は上代(ほぼ奈良時代まで)の助動詞であり、受身・自発・可能の意味がある。「受身・自発・可能」という字面を見ると「る」と同じでは?と思った人がいるかもしれないが、その直感は正しい。「る」の発達に伴って「ゆ」が少しずつ姿を消していった。なお、「ゆ」には尊敬の意味はない。ざり助動詞打消の助動詞「ず」の連用形つ助動詞完了の助動詞「つ」の終止形と格助詞 と人々が申している。本当にこれほどのもの(骨)は見たことがなかった。」と、言高くのたまへば、「さては、扇のにはあらで、
言 名詞 高く形容詞ク活用の形容詞「高し」の連用形のたまへ動詞ハ行四段活用動詞「のたまふ」の已然形。「言ふ」の尊敬語であり、ここでは作者から、「のたまふ」という行為の受け手である中納言に対する敬意。ば接続助詞★重要文法①未然形+「ば」 ( 未だ然らず、つまりまだ出来事が起きていない)⇒仮定(もし~ならば)②已然形+「ば」 (已に然り、もうその状態になっている)⇒(ⅰ)原因・理由(~なので)(ⅱ)偶然(~したところ)(ⅲ)必然(~するといつも)さては接続詞同じ見た目で接続詞と副詞の二種類が存在する。前者は「その状態のままでは」という否定的なニュアンスを含んだ文脈に使い、後者は「さらには」「そうであれば」といった意味を当てる。扇名詞の格助詞体言の代用に助動詞断定の助動詞「なり」の連用形は係助詞あら動詞ラ行変格活用動詞「あり」の未然形で接続助詞打消接続。接続は未然形。 声高におっしゃるので、「それでは、扇のもの(骨)ではなく、くらげのななり。」と聞こゆれば、「これは隆家が言にしてむ。」とて、笑いたまふ。
くらげ 名詞 海面に月が映っているように見えたり、海中にあたかも月が浮いているように見えたりすることから、漢字では「海月」と書く。また、「水母」とも表記されるが、何故このような表記されるかは未だ明らかになっていないとのこと。「中納言参りたまひて」ではクラゲに骨がないことを踏まえ当意即妙な発言をした清少納言だが、最近の研究では古代(カンブリア紀)のクラゲは「骨格」をもつ種もいたとされている。現代でもゆらゆらと妖しく揺れる様子に魅了される人が少なくないクラゲ。気になる人はぜひお近くの水族館へ。の格助詞な助動詞断定の助動詞「なり」の連体形の撥音便「なむ」の無表記なり助動詞推定の助動詞「なり」の終止形と格助詞聞こゆれ動詞ヤ行下二段活用動詞「きこゆ」の已然形「言ふ」の謙譲語であり、ここでは作者から、「聞こゆ」という行為の受け手である中納言に対する敬意。ば接続助詞★重要文法①未然形+「ば」 ( 未だ然らず、つまりまだ出来事が起きていない)⇒仮定(もし~ならば)②已然形+「ば」 (已に然り、もうその状態になっている)⇒(ⅰ)原因・理由(~なので)(ⅱ)偶然(~したところ)(ⅲ)必然(~するといつも)これ代名詞は係助詞隆家名詞が格助詞言名詞に格助詞し動詞サ行変格活用動詞「す」の連用形て助動詞強意の助動詞「つ」の未然形む助動詞意志の助動詞「む」の終止形とて格助詞笑ひ動詞ハ行四段活用動詞「笑ふ」の連用形たまふ動詞ハ行四段活用動詞「たまふ」の終止形。ここでは作者から、「笑ふ」という行為の主体である中納言に対する敬意。 くらげの骨なのであろう。」と申し上げると、「これは私の言葉に(私が言ったこと)にしてしまおう。」と言って笑いなさる。かやうのことこそは、かたはらいたきことのうちに入れつべけれど、
かやう 形容動詞 ナリ活用の形容動詞「かやうなり」の語幹。「このような」と訳を当てる。の格助詞こと名詞こそ係助詞強意の係助詞。は係助詞かたはらいたき形容詞ク活用の形容詞「かたはらいたし」の連体形。漢字で表記すると「傍ら痛し」となるように、傍の人にどのように見られているかを意識して心が痛むこと、つまり「きまり悪い」「恥ずかしい」などの意味をもつ。文学のテーマとして取り上げられることの多い「自意識」を覗うことができる語。また、傍にいる人の言動を見て「とても見ていられない」と思うような意味もあり、その際は「見苦しい」「心苦しい」などの訳を当てる。こと名詞の格助詞うち名詞に格助詞入れ動詞ラ行下二段活用動詞「入る」の連用形つ助動詞強意の助動詞「つ」の終止形べけれ助動詞当然の助動詞「べし」の已然形ど接続助詞 このようなこと(話)は、きまりが悪いことの中に入れるべきであるが(書くべきではないが)、「一つな落としそ。」と言へば、いかがはせむ。
一つ 名詞 な副詞終助詞「そ」と呼応し、直後の動詞の内容を禁止する。「な~そ」でセットであるが、終助詞「そ」単独で禁止を表すこともある。落とし動詞サ行四段活用「落とす」の連用形そ終助詞「な」と呼応し、禁止を表す。と格助詞言え動詞ハ行四段活用動詞「言ふ」の已然形ば接続助詞★重要文法①未然形+「ば」 ( 未だ然らず、つまりまだ出来事が起きていない)⇒仮定(もし~ならば)②已然形+「ば」 (已に然り、もうその状態になっている)⇒(ⅰ)原因・理由(~なので)(ⅱ)偶然(~したところ)(ⅲ)必然(~するといつも)いかが副詞よく英語の「how」に例えられ、文脈に応じて疑問または反語の訳を当てる。この場合は反語の意味が適切。は係助詞せ動詞サ行変格活用動詞「す」の未然形む助動詞意志の助動詞「む」の連体形 「一つも落とすな(書き洩らすな)」と(周囲の人々)が言うので、どうしようか、いや、どうしようもない(だから書き記しておく)。今回はここまで🐸
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