羽生結弦──飛翔の先へ 前人未到、唯一無二の世界観を 表現し続ける原動力
2025-11-25 T JAPAN編集部 @ T JAPAN web ENTERTAINMENTインタビュー・対談羽生結弦グッチGUCCI 鍛え抜いた身体と、年齢を重ねるにつれて増していく表現力。フィギュアスケーター羽生結弦は現在進行形で観るべき存在だ。真摯に築き上げた揺るぎない礎があるからこそ、翔び立てる。どこまでも清廉な彼の静かに燃える魂のありかたとは―― FacebookLINEBY MICHINO OGURA, PHOTOGRAPHS BY MISS BEAN, STYLED BY TETSURO NAGASE, HAIR BY TOMIHIRO KONO, MAKEUP BY TOMOMI SHIBUSAWA AT BEAUTY DIRECTION
前身頃は気品ある百合のモチーフがプリントされたシルクマテリアル、アームと背面は端正なストライプのコットンという異素材コンビのシャツ。羽生は風をはらんで揺れるスカーフのようなしなやかさを、マチュアな魅力で着こなす。
シャツ¥242,000(予定価格)/グッチ グッチ クライアントサービス TEL. 0120-99-2177
羽生は一瞬で集中力を高め、無数の羽根が舞うドラマティックな空間に静かに佇んだ。GGパターンが鮮やかなジャカード仕立てのデニムトップスは手の込んだ一枚。カジュアルさとクチュール感の相反する魅力を内包するアイテムだ。
デニムトップス¥363,000(予定価格)/グッチ
そこにすっと立つだけで、物語の始まりを感じさせる存在感を放つ羽生。深いインディゴブルーからホワイトまでグラデーションを描くデニムのセットアップをスタイリッシュに着こなした。ホースビット ローファーで足もとはドレスアップしたい。
デニムトップス¥363,000・デニムパンツ¥242,000・靴¥152,900(すべて予定価格)/グッチ
ユースカルチャーを感じさせるバンダナプリントのシャツをラフにまとって。エレガントなホースビットローファーを履きながらも、しなやかな舞いで服のもつ世界を表現する。音楽に合わせて、呼吸と身体を意のままに操る魔法のような瞬間を捉えた。
シャツ¥170,500・パンツ¥159,500・ソックス¥27,500・靴¥152,900(すべて予定価格)/グッチ
30歳を迎えて、さらに大人の魅力を放つ羽生。GGパターンが躍るコットンブルゾンをラフにまとう姿もクール。ブレスレットやビットローファーの金具など、煌めきを加えることでよりラグジュアリーかつスタイリッシュにまとめることができる。シックなボストンバッグを相棒に、次なる目的地を目指して迷わず進んでいく彼の姿を思う。
ブルゾン¥368,500・シャツ¥313,500・パンツ¥159,500・ソックス¥27,500・靴¥152,900・ブレスレット¥693,000・バッグ¥412,500(すべて予定価格)/グッチ
はらりと一粒の涙が頰を伝ったのは、風の中でポーズをとった一瞬だった。身につけたファブリックの軽やかさを表現するために用意した背景の布が風をはらんでダイナミックにはためく中で、天をあおいだ美しい横顔は、奇跡的に捉えられた一枚。撮影中もスタッフにやさしく「頑張ろう」と声をかける羽生。クリエイティブな現場をさらに高めようとするプロフェッショナルな姿勢が垣間見えた。
シャツ¥242,000(予定価格)/グッチ
羽生結弦スペシャルインタビュー
早朝、スタジオに向かって撮影スタッフがホテルを出発すると、前日まで晴れていた仙台の空に雪が舞い始めた。氷上の王・羽生結弦と対面する日にふさわしい、ひんやりとした緊張感に包まれる。
グッチのブランドアンバサダーを務める羽生は、この日のために選ばれたルックを身につけると、時に静謐に、時にダイナミックに、洋服のもつストーリーを身体の動きで的確に表現していく。2022年7月にプロに転向し、現役時代よりもさらに幅広いダンスの練習を積み重ねているという彼。陸上での動きはより美しく進化しているように見える。
「それでも、やはり自分はフィギュアスケーターなんだなと思います。ジャズ、バレエ、ヒップホップなどさまざまな勉強もしましたが、陸上でそういう動きの練習をしても、イメージしている疾走感が氷上でないと出せないところもあるので、少しもどかしさを感じたりもします」
羽生は、ソチと平昌の冬季五輪で二度の金メダルに輝き、数多くの栄冠を手にしてきた。それでもなお持てる技術を更新し、"表現"の本質に迫ろうとしている。何が彼を突き動かしているのか?
「平昌五輪が終わって、そこからは苦しい4年間でした。その後、北京五輪が終わってプロに転向してから素晴らしい方々と巡り合うことができて、競技のフィギュアスケートから解き放たれました。僕はどれだけ井の中の蛙(かわず)だったのかとわかったし、まだまだ学ぶことがたくさんあると気づかせていただいたんです」
なかでもクリエイティブな側面を開花させたのは「アイスストーリー」というアイデアだ。出演・制作総指揮、脚本執筆までを羽生自身が務め、演出をMIKIKO(演出振付家)が手がける、氷上を舞台とした壮大なエンターテインメント。彼の言葉を借りると、"「命」とは何か。「わたし」とは何か。そんな途方もない問いへのヒントになりたいと思い、物語とプログラムを綴る"とある。2023年から『GIFT』『RE_PRAY』『Echoes of Life』と3回にわたって行われたツアーは大成功を収めている。
「1回の公演で2 時間半ずっとひとりで滑り続けるというのは、通常のアイスショーでは考えられないこと。でも観客の方々は僕を観に来てくださっているので、すべてのプログラムで感動を伝えたい。いろいろな手法や視点を盛り込んで、ディテールにもこだわって作っています。現役のときのようにひとつのプログラムで見せるというよりも、僕のアイスストーリーの中では、プログラムはひとつのピース。もちろんそれ自体に物語はありますし、完結しているように見えるけれど、さらに次につながっていくものと考えています」
現在進行形で唯一無二の表現を追求する羽生。未来へのビジョンについて尋ねると、少し厳しい表情に変わった。その先については日々の努力を怠ってはたどり着けないものであると言う。彼の誠実さはここにある。
「正直、未来って何だろう、暗くて怖いなと思うところがあります。一歩一歩続けていくしかないし、何かイメージを固めてしまったらそれ以上のものにはなれないし、そこにしかたどり着けないと思うんです。4回転アクセルに挑んだときもそうでしたが、誰にもわからない道を開拓することは怖さと対面すること。その場所が真っ暗に見えるからこそ、多くの可能性があるんだろうなと思って、逆に今はそれを大事にしていますね」
プロ転向を機に取り組んでいることがもうひとつある。2023年3月より羽生が座長を務め、信頼するスケーターとゲストで構成される宮城でのアイスショー『notte stellata』だ。東日本大震災を経験した彼だからこそ、被災地から希望を灯す何かを発信したいと発案したものだ。この取材が行われたのは、狂言師の野村萬斎をゲストに迎えた、2025年の公演を終えたばかりの頃。羽生が2015-16シーズンのフリープログラムとして作った『SEIMEI』(萬斎主演の映画『陰陽師』の曲を使用)と、萬斎が震災への鎮魂の祈りをこめた過去の演目『MANSAIボレロ』という、ふたりの代表作に特別な演出を施し、今年の『notte stellata』ではこの2 演目を披露した。
「『SEIMEI』を作ったからこそ、萬斎さんに出会えました。このプログラムで自分の表現技法の原点が定まった気がします。萬斎さんからは日本人が文化的にもっている呼吸のリズムについて教えていただきました。そこから、自分の表現の中にはいつも日本の文化があることを意識しています。『SEIMEI』を最初に演じた10年前は、萬斎さんのお話を聞いても頭で考えることで精いっぱいでしたが、今回は一緒にお話をしながら、お互いのインスピレーションやイメージする形をマッチさせていくという感覚があった。プロになってからの3 年間は必死にもがいて走ってきたけれど、僕も成長できているんじゃないかなと感じています」
3.11から14年たった今も、被災地への支援を変わらず続けている羽生。復興に対する思いは彼の原動力になっている。
「僕の役割は語り部みたいなものなのかなと思っています。幸いなことに、僕をきっかけに支援してみようと思ってくださる方がこんなにたくさんいるのだと気づいたんです。知名度や蓄積してきた記録といったものを最大限に生かしながら、3.11のことに関してはずっと活動し続けなきゃいけないと思っています。被災者、当事者として当時のことは全部思い出せるけれど、街の風景もどんどん変わっていく。記憶というのは薄れていってしまうものです。元の風景を知っている人間だからこそ、震災を経験したときに、こんなことを大切にしなくてはならないんだと学んだものについては、伝え続けていきたい。自分が演技をすることで、募金活動だけではなく、実際に東北に足を運んでいただいたり、その土地のものに思いを馳せてもらったり、本当に小さなことでもいいので、そういうきっかけであり続けたいなと思っています」
ひとすじの風をまとい、研ぎ澄まされた空気とともに目の前に舞い降りた羽生結弦。その視線は、さらなる高みをめざす――。
シャツ¥242,000・パンツ¥181,500・ソックス¥27,500・靴¥152,900(すべて予定価格)/グッチ
羽生結弦(はにゅう・ゆづる)プロフィギュアスケーター。1994年12月7日、宮城県仙台市生まれ。4 歳からスケートを始める。2016-17シーズンでは史上初となるGPファイナル4連覇を達成。2014年ソチ五輪、2018年平昌五輪2大会連続で金メダルを獲得。2022年7月にプロフィギュアスケーターに転向後は、初の単独公演『プロローグ』、スケーター史上初の東京ドームでの単独公演『GIFT』をはじめ、『RE_PRAY』『Echoes of Life』『notte stellata』を開催。
掲載誌購入はこちらamazonセブンネットショッピング楽天ブックス
グッチ公式サイトはこちら
合わせて読みたい関連記事
羽生結弦の真髄に触れる舞を目撃!T JAPAN 9月27日発行号の撮影メイキング動画を先行公開 - T JAPAN:The New York Times Style Magazine 公式サイト羽生結弦さんが表紙とインタビュー特集に登場するT JAPAN 9月27日発行号。その撮影時に収録した、羽生さんの創造性あふれる舞の動画を特別に公開します。まるで短編映画を見ているかのような美しい動きから、もはや目が離せない──
www.tjapan.jp8
T JAPAN LINE@友だち募集中!おすすめ情報をお届け
友だち追加LATEST
注目のピアニスト エリック・ルーが シューベルトの即興曲集に抱く思い
Unwritten Notes ショパンコンクールを制したピアニストのエリック・ルーにインタビュー。彼が、シューベルトの即興曲集に抱く特別な思いとは―― T JAPAN編集部 @ T JAPAN web ENTERTAINMENT音楽ピアノクラシック音楽ピアニストショパンコンクールシューベルトインタビュー・対談インタビューシャネル、ディオールほか 新しい春を駆ける ドラマのあるワードローブ
A Breath of Fresh Air 2026年の春夏、ファッションはより革新的な局面を迎えている。デザイナー交代や強靭な物語を携えたメゾンなど多種多様。エモーションを呼び起こすドラマのあるワードローブに出合いたい T JAPAN編集部 @ T JAPAN web FASHION春夏ファッション2026春夏ファッションシャネルディオールコム デ ギャルソンバレンシアガジョルジオ アルマーニエルメス実力派勢ぞろいの話題作や 巨匠タルコフスキーの名作特集も 今月見るべき新作映画3選 <2026年4月>
Recommended Movies of the Month 発見、感動、思索……知的好奇心を刺激する、映画好きな大人のための今月の新作を厳選! T JAPAN編集部 @ T JAPAN web ENTERTAINMENT映画今月見るべき新作映画ザ・ブライドタルコフスキーオールド・オーク指揮者・野津如弘の 音楽と美酒のつれづれノート Vol.20 僕の音楽の道は続く
Notsu Note クラシック音楽と美酒。指揮者・野津如弘が、交錯する時間芸術の楽しみを自在に綴るこの連載。20回目は、自身の音楽の旅路をふりかえる T JAPAN編集部 @ T JAPAN web FOOD野津如弘野津如弘の音楽と美酒音楽お酒ウイスキーサントリーウイスキー響 まばゆいほどのオーラを放つ肌へまばゆいほどのオーラを放つ肌へ SK-Ⅱ ジェノプティクス
The Thing 繰り返す頑固なシミに着目した新美容液、酷暑の中でも使いやすいジェルクリーム、肌の赤み悩みをカバーするグリーンの色つき下地。ブライトニングケアの進化形を味方に、澄んだ肌を目指す! T JAPAN編集部 @ T JAPAN web BEAUTY美容平輝乃スキンケアSK-ⅡUVケア日焼け止めコスメ「それ可愛い!」から会話が始まる エルメス、ディオール、ロエベほか 春のハッピー・チャーム図鑑
Charming Charms! チャームはいまや、ささやかな社会現象。上質なカンバッセーション・ピースにもなる楽しいチャームを厳選ご紹介。バッグの外に内に、ハッピーの素を携えて出かけましょう! T JAPAN編集部 @ T JAPAN web FASHIONチャームエルメスディオールバレンシアガロエベフェンディ帝国ホテル 京都と 新素材研究所 共鳴する遺産継承の物語
Tapestry of the Times 京都・祇園にこの春開業した帝国ホテル 京都。内装デザインを手がけた新素材研究所の榊田倫之に話を聞きながら、歴史的建造物の再生と記憶を引き継ぐ意義を読み解く T JAPAN編集部 @ T JAPAN web DESIGN&INTERIORS京都建築・インテリアホテル・旅館伝統帝国ホテルシャネル、ルイ・ヴィトンほか 人気ブランドの 新実力派バッグ15選【2026春夏最新】
Carry Your Signature — The New Icon Bag 魅力的なバッグがこの春もハイブランドから登場。全く新たに提案されたデザインや、新しいクリエイティブディレクターによるアーカイブの再解釈など、どれも魅力たっぷり。持つ人自身を表わす名刺にもなる、機能性と美しさを備えた新作バッグをご紹介 T JAPAN編集部 @ T JAPAN web FASHION春夏ファッションバッグシャネルルイ・ヴィトンディオールプラダグッチセリーヌ月のリズムで読む、12星座占い 濱美奈子のハーモニー占星術 <2026/4/2~2026/4/16>
Harmonic Astrology 天地照応、この世のすべてのものは宇宙の律動の影響のもとに個々のバイブレーションを持っているーー。それが「ハーモニー占星術」の根本の考え。宇宙のリズムに合わせ自らをチューニングし、自分の音色を美しく響かせながら周囲と調和し、幸福なハーモニーに包まれて生きる。新しい時代を心豊かに生きていくヒントを、濱美奈子が新月と満月のタイミングでお届けします T JAPAN編集部 @ T JAPAN web ENTERTAINMENT濱 美奈子 ハーモニー占星術濱 美奈子占い星座占い開運の秘訣占い 2026有元葉子さんの 「おいしいものは身体にいいのよ」 Vol.33 ふっくらジューシーハンバーグ
Delicious Delight Recipes! 肉の旨みを閉じ込めたふっくら大きなハンバーグ。おいしいハンバーグを家で焼けたらと思っている皆さん、ぜひこのレシピで作ってみて。自家製玉ねぎドレッシングでいただくのがまた格別! T JAPAN編集部 @ T JAPAN web FOOD有元葉子おいしいものは身体にいいのよレシピ簡単レシピハンバーグいま行くべき究極のレストラン首都圏編 vol.4「五氣里」 (千葉県・いすみ市)
The Destination Restaurants in Japan 美食の街として注目度が高まる千葉県、いすみ市。なかでもひときわ熱視線が注がれるのが「五氣里(いつきり)」だ。日本各地から食通を惹きつける大人のためのデスティネーションレストラン。その魅力を、ガストロノミープロデューサー・柏原光太郎の視点でひもとく。 T JAPAN編集部 @ T JAPAN web FOODいま行くべき究極のレストランデスティネーションレストランレストラン・飲食店五氣里ホテルいすみ市千葉県グランピング韓流ナビゲーター・田代親世の 必見! 韓流名作ドラマ3選 Vol.39 ダークヒロインここにあり!
The Best K-Entertainment 韓流エンタメの第一人者、田代親世さんが、韓国ドラマの魅力を様々な独自の切り口でご紹介。今回は、かつて主流だった“清純可憐”なヒロイン像の変化に注目。近年、存在感を増している“ダークヒロイン”が魅力の作品をセレクト。 T JAPAN編集部 @ T JAPAN web ENTERTAINMENT連載韓流田代親世ドラマ韓国ドラマ韓流ドラマ海外ドラマシン・ヘソン FEATUREMarch 27, 2026
本誌申込 FOLLOW US MEMBERSHIP編集部から届くメールマガジン、会員限定プレゼントや特別イベントへの応募など特典が満載
新規会員登録 ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標です。ABJマークの詳細、ABJマークを提示しているサービスの一覧はこちら https://aebs.or.jp 2025-11-25 T JAPAN編集部 @ T JAPAN web ENTERTAINMENTインタビュー・対談羽生結弦グッチGUCCI FacebookLINE