電路の絶縁②:絶縁耐力試験の概要(試験電圧の決め方)
電路の絶縁②:絶縁耐力試験の概要(試験電圧の決め方) 2025 12/15 法規解説 2025年12月15日法規科目の計算問題の中で、絶対に落としたくないのが「絶縁耐力試験」の電圧計算です。なぜなら試験においても頻出ですし、実務でも非常に重要なものだからです。
この記事では、電気設備の技術基準の解釈(電技解釈)に基づき、試験電圧の決め方を解説します。ここを理解すれば、高圧受電設備の実務でも役立つ知識が身につき、試験での計算ミスもゼロになります。
目次この記事で解説する内容の全体像と結論
まず、結論から整理します。絶縁耐力試験の計算問題で覚えるべきポイントは以下の3点に集約されます。
- 「最大使用電圧」を基準にする(公称電圧や定格電圧ではない)
- 接地方式と電圧区分で「倍率」が決まる(1.5倍、1.25倍など)
- 「最低電圧」のルールがある(計算結果が低すぎる場合の足切りライン)
試験では絶縁耐力試験の試験電圧がいくらか?といった問いが出ます。試験電圧は以下の式で求められます。
$$\text{試験電圧} = \text{最大使用電圧} \times \text{倍率}$$
このシンプルな式を正しく使いこなすための手順を、順を追って見ていきましょう。
基礎からの解説:絶縁耐力試験とは?
絶縁耐力試験のイメージ電気設備(変圧器やケーブルなど)は、電気を流しても外に漏れないように「絶縁」されています。しかし、雷や事故で異常な高電圧がかかったとき、その絶縁が破れてしまうと大事故になります。
そこで、通常よりも高い電圧を一定時間(10分間)かけ続けても耐えられるか?をチェックするのが絶縁耐力試験です。イメージとしては、風船にわざと多めの空気を入れて、割れないか確認するテストに似ています。
用語解説:最大使用電圧と公称電圧の違いここが最初のつまずきポイントです。
- 公称電圧:通常よく使われる電路の電圧のことです。(例:6.6kV、22kV、66kV など)
- 最大使用電圧:平常時に電路にかかる可能性がある最大の電圧です。電路の電圧は常に一定ではなく、場合によっては高くなったり低くなったりします。計算の基準になるのは、ここまでは高くなる可能性があるという最大使用電圧です。
【重要ルール】1000Vを超える電路の場合、公称電圧に\(\frac{1.15}{1.1}\)を掛けたものを最大使用電圧とします。
$$\text{最大使用電圧} = \text{公称電圧} \times \frac{1.15}{1.1}$$
なぜ \(\frac{1.15}{1.1}\)なのか?(おすすめの覚え方)この分数は一見覚えにくいです。しかし次のように分解して考えるとイメージしやすくなります。
- まずは「1.1」で割る:公称電圧を1.1で割ると、キリの良い電圧になります。
- \(6600 \text{V} \div 1.1 = 6000 \text{V}\)
- \(22000 \text{V} \div 1.1 = 20000 \text{V}\)
- そこから「15%」増しにする\(\times 1.15\):基準電圧に対して、送電ロスを見込んだり、負荷が軽くなった時に電圧が上がったりする分を考慮して、「最大でこれくらいまでは上がるだろう」と 15%の余裕(1.15倍) を持たせます。
つまり、式は次のように書き換えられます。
$$\text{最大使用電圧} = \left( \frac{\text{公称電圧}}{1.1} \right) \times 1.15$$
計算するときは「1.1で割ってキリのいい数値にしてから、1.15倍する」と覚えるとスムーズです。
【一覧表】よく出る公称電圧と最大使用電圧の関係試験によく出る電圧階級を計算してみました。この表の値は、計算しなくてもパッと出るようにしておくと有利です。
区分公称電圧[V]最大使用電圧[V]高圧3300345066006900特別高圧220002300033000345006600069000154000161000試験電圧の決め方(倍率のルール)
電技解釈 第15条には、電圧の大きさや接地方式に応じて「何倍の電圧をかけるか」が定められています。試験によく出る部分を抜粋して整理しました。
最大使用電圧の区分接地方式(中性点)倍率最低電圧備考7000V以下指定なし1.5倍500V低圧屋内配線高圧ケーブル(3.3kVなど)7000V超〜60kV以下指定なし1.25倍10500V6.6kV配電線22kV受電設備60kV超非接地1.25$ 倍–電験3種の対象外なので覚えなくてOK60kV超接地(抵抗接地など)1.1倍75kV66kV送電線電験3種の対象外なので覚えなくてOK170kV超直接接地0.72倍–超高圧送電線電験3種の対象外なので覚えなくてOK 覚え方のコツ- 公称電圧3.3kV、6.6kVなど:一番厳しい1.5倍。
- 一般的な高圧・特高(7kV〜60kV):少し緩めて1.25倍。
よくある勘違い・つまずきポイントの解説
「最低電圧」の適用忘れ試験電圧には最低電圧があります。試験電圧の計算結果が「最低電圧」を下回った場合は、最低電圧が試験電圧になります。答えになります。
- 例:最大使用電圧200Vの場合
- 計算:\(200 \times 1.5 = 300 \, [\text{V}]\)
- 判定:最低電圧500Vより小さい。
- 試験電圧:500V($300 \text{V}$ ではない)
通常は交流(AC)で行いますが、交流は測定対象の浮遊容量などの関係で、大容量の測定装置が必要になります。そのため実務では直流で試験を行うケースも多いです。直流で試験を行う場合は交流の試験電圧の2倍の電圧で行います。
例えば公称電圧6.6kVなら、試験電圧は10,350Vです。しかし直流で試験する場合は2倍の20,700Vで試験をする必要があります。
簡単な確認問題
問題公称電圧6600Vの高圧受電設備の絶縁耐力試験を行う。試験電圧(交流)は何Vか?
正解と解説答え: 10350V
- 最大使用電圧を求める公称値6600Vを1.1で割って、更に1.15をかけて最大使用電圧を求めます。$$6600 \div 1.1 = 6000$$$$6000 \times 1.15 = 6900 \, [\text{V}]$$
- 倍率を確認する最大使用電圧が7000Vなので、倍率は1.5倍となります。$$6900\times1.5 = 10350V$$
過去問解説 法規 平成22年(2010年) 問8
ここでは、実際に計算手順が問われた代表的な過去問を解説します。
問題文公称電圧 $22000 \text{V}$、三相3線式電線路のケーブル部分の心線と大地との間の絶縁耐力試験を行う場合、試験電圧と連続加圧時間の記述として、正しいものは次のうちどれか。
- (1) 交流 23 000 [V] の試験電圧を 10 分間加圧する。
- (2) 直流 23 000 [V] の試験電圧を 10 分間加圧する。
- (3) 交流 28 750 [V] の試験電圧を 1 分間加圧する。
- (4) 直流 46 000 [V] の試験電圧を 10 分間加圧する。
- (5) 直流 57 500 [V] の試験電圧を 10 分間加圧する。
特別高圧(22kV)ケーブルの「絶縁耐力試験電圧」と「試験時間」の知識を問われています。「最大使用電圧の算出」→「倍率の適用」 が正しくできるかがポイントです。
使う公式・考え方のおさらい- 最大使用電圧:公称電圧 \(\times \frac{1.15}{1.1}\)
- 倍率:
- 最大使用電圧7000V超~60kV以下:1.25倍
- 試験時間:原則として 10分間
公称電圧22000Vをもとに、最大使用電圧を計算します。例の覚え方(1.1で割って、1.15を掛ける)を使います。
$$22000 \div 1.1 = 20000$$
$$20000 \times 1.15 = 23000 \, [\text{V}]$$
これが最大使用電圧です。
ステップ2:試験電圧を計算する最大使用電圧23000Vは、7000Vを超え60kV以下の区分に入ります。この区分の倍率は1.25倍です。
$$\text{試験電圧} = 23000 \times 1.25$$計算します。
$$23000 \times 1.25 = 23000 \times \frac{5}{4} = \frac{115000}{4} = 28750 \, [\text{V}]$$
よって、交流で試験する場合の電圧は28750Vです。
ステップ3:条件を確認する(直流の場合など)選択肢には「直流」の場合も含まれている可能性があります。もし直流で試験を行うなら、交流の2倍の電圧が必要ですので、直流で試験をする場合は$$28750 \times2=57500 \text{V}$$ となります。
ステップ4:試験時間を確認する試験電圧は甲虫28750V、直流57500Vのどちらかに絞られました。続いて試験時間を確認します。試験時間は10分間です。
これに合致する選択肢は(5)です。
答えとその確認方法- 試験電圧:直流 57500V
- 時間:10分間
よって正解は(5)です。
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