総理就任でコメ政策の「石破茂ビジョン」は封印!?…動かぬ農政・消え行く田園に対し、2030年までの5年で必要な“転換の決断”
2025.11.20- #社会
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鈴木 宣弘
東京大学大学院農学生命科学研究科教授
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2024年に端を発した「令和の米騒動」。2025年までのわずか1年でコメの価格は6割以上暴騰した。政策対応は刻々と打ち出されているものの、先行きはなお不透明――日本人の主食であるコメを「買えるかどうか」を気にしながら節約を強いられる日々が続いている。
農業は国防そのものだ。世界の供給網が揺らげば、四方を海に囲まれた島国・日本は一気に脆弱になる。国難を乗り切るためにもっとも大切なのが「食料安全保障」なのだ!
コメが買えない、高い、この異常事態をどう乗り切るのか?そして、この未曾有の危機の裏側には何があるのか…。この国の食料問題の「暗部」と闘い続ける東大教授・鈴木宣弘の告発と提言の書『もうコメは食えなくなるのか』より一部抜粋・再編集してお届けする。
『もうコメは食えなくなるのか』連載第18回
-AD-『最強の「農政改革特命チーム」に情熱を燃やした石破茂氏の過去…総理就任で発揮されるはずだった“コメ政策ビジョン”の真価とは』より続く。
このままでは農家の経営が行き詰まる
生産調整を緩和してコメの増産に舵を切る。生産者の生活を守るため、国庫からの直接支払いによって農家の所得を補償する。そうすれば農家の生活は潤い、なおかつコメの価格が下がる。生産者も消費者も両方WIN‐WINの素晴らしい政策だ。
前述のとおり、総理大臣に就任する前年まで石破氏は「この政策を今こそ実行しなければならない」という立場だった。
ところが総理大臣になったあとは、「石破茂ビジョン」は全部封印されてしまったように見えた。本稿執筆中の2025年秋、農家への思いきった所得補償と「稲作ビジョン」の議論が本格的に始まる気配はない。
Photo by gettyimagesこの記事の全ての写真を見る(全4枚)所得補償の議論はゼロではないものの、2025年現在の政府は「大規模農業とスマート農業に取り組む事業者を支えよう」という方向性だ。日本のコメ農家全体に網をかける所得補償について議論するべき局面なのに、議論の中身がずいぶんと矮小化されてしまった。
大規模化ももちろん必要だが、15ヘクタール以上の農地をもつ大規模農家は、全体の1.7パーセントしかいない(その面積は農地全体の27パーセントだ)。仮にその人たちだけに所得補償しても、98パーセント以上の農家は救われない。それどころか1年、2年と経つうちに経営が行き詰まって潰れていくだろう。
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