110億円の月探査ミッションが一瞬で水の泡。原因があまりに単純だった
110億円の月探査ミッションが一瞬で水の泡。原因があまりに単純だった

110億円の月探査ミッションが一瞬で水の泡。原因があまりに単純だった

110億円の月探査ミッションが一瞬で水の泡。原因があまりに単純だった
  • 2026.03.11 17:00
  • 27,277

  • Ellyn Lapointe - Gizmodo US
  • [原文]
  • ( 中川真知子 )
NASAとロッキード・マーティンによる、月探査衛星「Lunar Trailblazer」が月周回軌道にある様子を描いたイラスト

NASAの月探査機「ルナ・トレイルブレイザー(Lunar Trailblazer)」は、月面の水をマッピングして将来の月探査に重要な手がかりをもたらすはずでした。しかし、昨年ケネディ宇宙センターから華々しく打ち上げられた直後、ただの鉄屑になってしまったんです。

え、なんで? は?

びっくりというか呆然です。だってこれ、7200万ドル(約110億円)もしたんです。

で、その驚愕の理由が、情報公開法(FOIA)を通じて開示された調査報告書によって明らかになりました。

太陽、そっちじゃないわ。180度の勘違い

報告書によると、原因は超シンプルでした。太陽光パネルを太陽に向けるはずのソフトウェアの設定ミスで、「太陽とは真逆の方向(180度反対)」を向いてしまったのです。

打ち上げから約48分後、探査機は予定通りロケットから分離。運用チームとの通信も確立され、ここまでは順調でした。しかし、ソフトウェアの「逆走」によってパネルには一切光が当たらず、探査機はまたたく間に極寒の電力不足状態へ突入。姿勢制御も効かなくなり、地上との通信も完全に途絶えてしまったんです。

報告書は「一つひとつの不具合は修復可能だったかもしれないが、連鎖的に起きたトラブルのコンボには勝てなかった」と、絶望的な状況が淡々と綴られていました。

削られた予算と省かれたテスト

このミッション、実は「クラスD」と呼ばれる低予算枠でした。クラスDは、低予算/高リスクを前提とした枠組み。最新技術のテストや特定のピンポイントな調査を目的としていて、失敗する可能性もあるけれど安く早く挑戦しようというスタンスの枠です。失敗してもNASA全体のプログラムに致命的な影響を与えないというのも、クラスDの基準のひとつです。

ルナ・トレイルブレイザーの製造を担当したロッキード・マーティン社は「低予算ミッションにはリスクがつきものだ」とコメントしていますが、報告書には辛辣なことが書かれています。

「打ち上げ前にパネルの向きを確認するエンドツーエンドのテストさえしていればコードのミスに気づけたはずだ」

つまり、最初から最後まで通しで行われるべき運用テストが、コスト削減のために端折られていたんです。まぁ、低予算だからなぁ…とは思いますが。

結局、衛星は数ヶ月にわたる懸命な復旧作業も虚しく、2025年7月に正式に運用終了が宣言されました。

失われた「月の水」の地図

もし成功していれば、この探査機は月面開発のゲームチェンジャーになるはずでした。NASAのアルテミス計画にとって、月面のどこに、どれくらいの水があるかを知ることは、人類が月に住むための死活問題だからです。

とはいえ、何も成果がなかったわけではありません。ロッキード・マーティン社は「メインエンジンの交換や激しい振動テストには成功した」と、強調しています(110億円のプロジェクトが「パネルの向きを間違える」という致命的かつ単純なミスで終わった事実は変わりませんが)。

NASAはこの失敗を「教訓」にするとしていますが、次に月を目指す探査機たちが、ちゃんと「お日様」の方向を向いてくれることを祈るばかりです。

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