ビーチバレー鈴木千代「気合が入って脱いじゃいました」
ビーチバレー鈴木千代「気合が入って脱いじゃいました」

ビーチバレー鈴木千代「気合が入って脱いじゃいました」

東京五輪目指す 女子アスリートの履歴書 ビーチバレー鈴木千代「気合が入って脱いじゃいました」 公開日:2020/12/14 14:50 更新日:2020/12/20 10:09
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鈴木千代(27歳、クロス・ヘッド所属)

小麦色の肌がまぶしいビーチバレーの鈴木千代選手(C)日刊ゲンダイ この記事の画像を見る(4枚) 【写真】「新東洋の魔女」と呼ばれた田村(旧姓前田)悦智子さん

 秋口からツアーや大会も開かれはじめ、国内のビーチバレー界はコロナ時代に適応しつつある。  試合の直前まではビキニ姿でマスク着用――。 「どこを隠して、どこを開放してるのか……。不思議な感じですよね(笑い)」  9月27日に開催されたJBVシリーズ「RAIZIN CUP IN 宮下パーク」を制した鈴木がハニカミながら言う。  坂口由里香(26)とのペアでワールドツアーを戦い、今年2月上旬のシェムリアップ大会で3位、3月上旬のグアム大会では優勝を飾った。5月に予定されていた東京五輪選考会に向けて勢いに乗っていたさなか、コロナ禍によって夢舞台の延期が下された。 ■コロナ前より好調 「最初の1、2週間は何もやる気が起きないくらいショックを受けました。ですが、今はコロナ前よりチーム状況やプレーが良くなっています」と、鈴木はこう続ける。 「4月、5月は練習場として使っていた市のビーチ、そしてジムも閉鎖されました。だから、コーチと少人数で自宅近所の公園にある、おじいちゃんが体を動かすようなトレーニング器具で、負荷をかけながら筋トレをしていました」  本来ならばワールドツアーで海外を転戦していた時期だ。 「大会もない状況でモチベーションを保つのは難しかったですね。ですが、6月中旬に、やっとビーチが使えるようになったんです。『砂浜に立てること自体がこんなにうれしいんだ!』と実感しましたよ。それからは練習をできることが楽しくて楽しくて、もう仕方がない。五輪を目指して気を張り詰めてやっていた2月ごろよりも、すごく楽しく競技をしています。雰囲気よく練習しているので、結果的にプレーの質も上がりました」(鈴木)

部活はサボりたい一心だった

坂口(右)とのペアで結果もついてきた矢先…(C)共同通信社 この記事の画像を見る(4枚)

 来夏に延期された東京五輪出場に向けてひた走る鈴木は、バレーボール経験者の母と、柔道で国の強化指定選手に選ばれたこともある父のもとで、2人姉妹の次女として生まれた。  強靱なDNAを引き継ぎ、母と姉の影響から小学3年生からクラブチームでバレーボールを習い始めると、潜在能力が開花。特待生として、女子バレーボール界の名門、中高一貫校の共栄学園中に入学するまでになった。鈴木がビーチバレーと巡り合ったのは、中学3年生のころだ。 「一応、全国大会も経験させていただきましたが……。私より上手な選手は、先輩はもちろん、同学年、後輩にもたくさんいましたし、やりきった感もあった。バレー以外をやりたいなと。でも、特待生で入学したので、高校に上がってもバレーは辞められない。そんな時です。学校に、アンダーカテゴリーでビーチバレー日本代表を決める選考会の話が来た。『来たー! これに絶対受かってやろう!』と、部活をサボりたい一心でした。選ばれたら2週間シンガポールにも行けますし」(鈴木)  そうして高校進学を目前に控えた真冬の2月、後の母校となる産業能率大にある砂浜のコートに立った。初めてのビーチバレー。代表に選出されたいが、実力だけでは難しい。そこで鈴木はある奇策に打って出た。 「気温は1度か2度でしたが、(ウエアを)バッ! と脱ぎました。私だけ水着で参加したんです(笑い)。本当は脱ぐつもりなかったけど、気合が入ったら脱いじゃいました。同級生は『ぅえぇ!?』みたいな。『やめときなよ、風邪ひくよ!』って。それでも私は選ばれたかったんです」(鈴木)

「アルバイトをしてでも競技を続ける覚悟だった」

ビーチバレーの鈴木千代選手(C)日刊ゲンダイ この記事の画像を見る(4枚)

 強豪・共栄学園中に進学するも、バレーボールへの情熱は冷めかけていた。しかし、特待生で入学していたため、やめられない。そんな時に舞い込んできたアンダーカテゴリーのビーチバレー日本代表選考会。「受かって部活をサボりたかった」という鈴木は真冬の極寒の中、ウエアを脱ぎ去り水着姿を披露。気合をアピールした。 ■日本人史上初の勝利  作戦が功を奏したのか、30人ほどが参加したこの選考会を突破。これが転機となり、高校在学中は共栄学園高のバレーボール部で汗を流す傍ら、ビーチバレーを掛け持ちする二足のワラジ。高校3年時には部活動で総体の優秀選手賞を受賞し、ビーチバレーではU21ワールドツアーチャンピオンシップで日本人史上初となる勝利を挙げた(9位)。  産業能率大への進学と同時に「チーム内の自分より上手な選手との差を実感した」という理由で体育館を離れ、砂浜に活躍の場を求めた。  ビーチバレーに専念した大学時代は、アジアU21大会で準優勝するなど華々しい成績を残した。  ロンドン五輪、リオ五輪ではチケットが真っ先に完売したといわれるほど海外で人気があるビーチバレーだが、日本国内では“マイナー競技”。就職活動では波乱があった。JOC(日本オリンピック委員会)の就職活動制度、「アスナビ」により現在所属するクロス・ヘッド㈱に内定が決まったのは卒業のわずか3週間前だった。 「本当はもっと早くに、アスナビを通じて、すごく小さな不動産の会社に決まっていました。当然アスリートとして採用してもらったのですが、急きょ会社の方針が変わったみたいで『やっぱりごめんなさい』と内定が取り消されてしまったんです。JOCの担当者さんからは『(新たな就職先を見つけるのは)ちょっと厳しいかもしれない』と言われて……。やばい、これは絶望的だなと焦りましたよ。ですが、就職できなくても、アルバイトをしながら自腹を切ってでもビーチバレーの道に進みたいという覚悟があった。そんな時に、新聞でアスナビを知った社長がその活動に賛同して、JOCに問い合わせてくれたんです。受け取った候補者リストには数十人いたようですが、『世界と戦う私の姿が他の社員の刺激になれば』と、選んでいただけました。不運から一転、ありがたいです」(鈴木)  2016年4月から同社の人事総務部に所属し、シーズン中は月2日、オフシーズンは週2日程度で勤務しながら、ビーチバレーに精を出す。万全の支援体制に加え、社内には鈴木の応援部もつくられた。競技に集中できる環境が整い、結果もついてきている。

身長差を感じさせない

万全の支援体制と社内には鈴木の応援部も(C)日刊ゲンダイ この記事の画像を見る(4枚)

「身長差を感じさせない頭脳プレー、粘り強いディフェンスを見ていただきたいです。私のチームは背が低いんです。私は171センチで、ペアの坂口(由里香)は165センチ。世界のレベルからすると子供みたいな身長です。だけど、海外の190センチとかの大きな選手に勝ってきて、優勝もしました。日本人は身長の低い人種ですが、それでも世界で戦っていけることを証明していきたいです」(鈴木)  ビーチバレーは競技中、監督やコーチからの助言が禁止されている。自身の長所を「観察」と語る鈴木のプレーにも注目だ。 ▽すずき・ちよ 1993年11月18日、東京都江戸川区生まれ。小学3年からバレーボールを習い、特待生として中高一貫の共栄学園へ進学。中学3年からビーチバレーを始める。中・高で全国大会を経験した。産業能率大に入学すると、ビーチバレーに専念。卒業後はクロス・ヘッド(株)に所属している。競技での強みは「観察力」。通勤中の電車内では観察眼を磨くために、どの乗客が先に降りるか動向を探っているという。

【連載】東京五輪目指す 女子アスリートの履歴書

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