火事で勤め先の愛知の老舗酒蔵が全焼…杜氏の27歳女性が福井へ移り住み目指す再建の日 守りたい水谷酒造の「千瓢」「千実」の味
拡大する丹生酒造で水谷酒造の酒造りを行っている後藤さん=11月27日、福井県越前町天王
愛知県の酒造会社の女性が、10月から丹生酒造(福井県越前町天王)に住み込んで酒造りに励んでいる。女性が所属する酒蔵は昨年、火災で全焼した。「最初は先のことは考えられなかったがいろんな方が支えてくれている。お酒を造ることで応えていきたい」。再建に向け、伝統の味を福井でつなぎ続けようとしている。
女性は後藤実和さん(27)。約200年続く老舗酒蔵、水谷酒造(愛知県愛西市)の杜氏(とうじ)見習いとして勤務していた昨年5月に火災が発生。酒蔵は全焼し、醸造設備のほか貯蔵していた酒も失った。以降は地元の酒造会社協力の下、共同醸造を行い、今季は丹生酒造のほか愛知の2酒蔵が手を差し伸べた。
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後藤さんは数年前にイベントで丹生酒造の「飛鳥井」を口にした際に「心地よい柔らかいうまみがある」とほれこみ、酒蔵に訪れるなど交流があった。今回も協力の依頼をしたところ快諾を受けた。半年間、丹生酒造に住み込み、同社の酒造りを行うとともに水谷酒造の看板商品「千瓢」「千実」も製造する。
現在は丹生酒造杜氏の井尾光洋さん(45)と二人三脚で仕込みを始めており、作業が本格化している。12月中旬以降、順次、酒が出来上がる予定で、後藤さんは「微生物を扱う上で重要な衛生管理がここでは細かい部分までより徹底されている。もろみの温度管理も違う部分がある」と話し、学びの日々を送っている。
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水谷酒造の現地の酒蔵はクラウドファンディングで集まった資金などを活用して再建し、2028年1月に稼働する見通しだ。稼働に合わせて後藤さんは杜氏を継ぐことになっている。
「千瓢」は甘い香りがする一方、口当たりが軽く香りが抜けるのが特徴。酒を造る上で太平洋側と日本海側の気候への対応も異なるといい、「どこにうまみの出し方があるのかなど経験を重ね、自分の引き出しを増やしたい」と意気込んでいる。