【打倒近鉄?】三重県という特殊な環境が生んだ快速「みえ」
【打倒近鉄?】三重県という特殊な環境が生んだ快速「みえ」

【打倒近鉄?】三重県という特殊な環境が生んだ快速「みえ」

【打倒近鉄?】三重県という特殊な環境が生んだ快速「みえ」

名古屋から伊勢志摩地方へ鉄道で向かう場合、2つのルートがあります。

一つは近鉄が運行する特急列車、もう一つはJR東海が運行している快速「みえ」です。

三重県内では輸送人員、列車本数などあらゆる面において近鉄が圧勝状態の中、なぜJR東海は快速「みえ」を走らせているのでしょう?

▲これでもかと言わんばかり「快速みえ」をアピールするJR東海(津駅にて)。

 

 

 快速「みえ」の概要

快速「みえ」は名古屋から関西本線、伊勢鉄道伊勢線、紀勢本線、参宮線を経由して伊勢市、鳥羽を結ぶ列車です。

JR東海が発足した直後の1988年に運行を開始しました。

当初はキハ58系、キハ65系が使用されていましたが、1994年に高性能気動車キハ75系が投入され今に至ります。

2両もしくは、4両編成で運行されており、2両編成の場合は1両の半分、4両編成の場合は1両が指定席となっています。

 

 快速「みえ」と近鉄特急の競合関係

近鉄は数多くの特急列車を走らせていますが、そのうち競合しているのは名古屋から宇治山田、鳥羽、賢島などを結ぶ名伊特急です。

両者がどのような競合関係にあるのかまとめてみました。

 

走行区間の位置関係

オレンジの線が快速「みえ」、黄色の線が近鉄名伊特急です。

名古屋から鳥羽まで全区間競合しているわけではなく所々路線が離れているところがあります。

しかし、特徴的なのは三重県内の主要駅でほぼほぼ両社が競合しているという点です。

四日市と近鉄四日市は若干距離が離れていますが、桑名、津、松阪、伊勢市、鳥羽は両社が共同で使用しており、駅勢力が完全に被っています。

各駅のJRと近鉄の乗員客数は以下の通りです。

全駅において近鉄がJRを圧倒しています。

 

スペックを比較

続いて所要時間や運行本数、料金などを比較してみます。

所要時間、運行本数、1編成の両数は近鉄特急が圧倒しています。

近鉄は全区間が電化、複線化されているため、速度や本数は近鉄が有利です。

一方、料金は快速である「みえ」の方が安いです。表に記した料金は指定券を加えた額のため自由席であれば約1,000円弱の差がつきます。

 

 快速「みえ」のハンデ

 

非電化区間が多い

快速「みえ」が走る殆どの区間は非電化路線となっています。

電化されているのは関西本線の名古屋から河原田までで、他の区間は非電化となっています。

基本的に電化路線の方が非電化路線よりもスピードが出しやすく、乗り心地も良いのですがこのハンデは車両によってある程度カバーされています。

1994年から導入されたキハ75系は米国のカミンズ社製エンジンを搭載した超高性能気動車で、電車と遜色のない走行性能を有しています。

一部区間では最高速度120km/hで運転されており、名古屋から多気までの所要時間は特急「南紀」とほとんど変わりません。

表定速度も約84km/hほどで国内の気動車を使った快速列車としては最速となっています。

▲関西本線を猛スピードで爆走する快速「みえ」。

単線区間が多い

快速「みえ」が走る殆どの区間は単線区間となっています。

複線化されている区間は関西本線の名古屋から笹島信号場、弥富から桑名、朝明信号所から富田、富田浜から四日市、南四日市から河原田と、伊勢鉄道伊勢線の河原田から中瀬古までです。

快速「みえ」が走る路線は全体的に線形がよく、最高速度も高めに設定されていますが、単線区間ではすれ違いのための運転停車や、ポイント分岐通過時の減速が発生し、キハ75系の性能を完全に活かしきれていません。

JR東海は関西本線の複線化やポイント分岐の一線スルー化など設備の強化は進めてきましたが、完全とは言えず全線複線の近鉄には太刀打ちできない状態です。

 

 快速「みえ」のアドバンテージ

 

安い

「みえ」は快速列車であるため普通乗車券のみで乗車できます。当たり前ですが別途特急料金を払う近鉄特急よりも料金は安いです。

その安さに拍車をかけているのが「快速みえ得ダネ4回数券」です。

名古屋市内の各JR駅から鳥羽まで1回あたりの料金はわずか1,470円となる大変お得な切符がJR東海から発売されています。

快速「みえ」の武器はとにかく安さだと思います。

 

近鉄急行より速い

所要時間の面で近鉄特急にはぼろ負けの快速「みえ」ですが、近鉄の急行よりは速いです。

名古屋から伊勢市へ向かう場合、近鉄急行だと1時間40分から2時間ほどかかりますが、快速「みえ」なら最速1時間半ほどの所要時間で済みます。

快速と言いながら停車駅は特急列車並みに絞っているため、快速「みえ」は結構速いです。

 

短距離利用に強い

まずは主要駅間ごとの所要時間をご覧ください。

全区間を通すと近鉄特急の方が速いですが、短距離の利用だとそこまで所要時間に差が開きません。

特に沿線人口が多い名古屋から松阪の間では互角の所要時間となっています。

ただ快速「みえ」はすれ違い待ちなどで列車ごとの所要時間に大きな差が生じるため、基本的に快速「みえ」の方が遅いと思います。

しかし、乗車券だけで乗れると思えばそこまで気にならないでしょう。

 

快速「みえ」が走る沿線の都市は県内最多の人口を誇る四日市市や県庁所在地の津市、10万人以上の人口を有する桑名市、鈴鹿市、松阪市、伊勢市など三重県内の主要都市をほぼ全て網羅しているため、これらの都市を安く速く結ぶ快速「みえ」は三重県民にとってかなりありがたい物だと思います。

 

また、短距離利用だと近鉄の普通運賃よりもJRの運賃の方が安くなります。

近鉄の初乗り運賃は昔からJRより高く、2023年には平均17%ほど値上げが行われています。

最近は近鉄からJRにシフトする傾向もみられるようです。

しかし、乗車距離が40kmを越えると近鉄の方が安くなります。

また、通勤時間帯の快速「みえ」はかなり混むため、どうしても座りたいなら近鉄特急に乗るのがいいでしょう。

▲近鉄ユーザーに対して大々的に安さをアピールするJR東海(2013年当時)。

 

JRの路線ネットワークを活用できる

快速「みえ」は東海道新幹線との接続を考慮したダイヤを組んでいるため、東京などから新幹線を使って三重に行く場合は快速「みえ」を使った方が安く乗り換えも便利です。

また、近鉄に乗る場合はどうしても名古屋で切符が打ち止めとなりますが、快速「みえ」はJR路線を走るため出発地となるJR駅から目的地まで1枚の乗車券で済みます。

切符は距離が長ければ長いほど1kmあたりの料金が安くなりますので、かなりお得に三重県に行くことができます。

一方、関西圏からは近鉄の独壇場となっているため、関西圏からの誘客は一切考慮されていないでしょう。

 

 

このように快速「みえ」には近鉄特急にない利点がいくつかありますが、やはり多種多様な車両が走りまくっている近鉄特急に比べると見劣りがしますし、単線や非電化区間が多い快速「みえ」のルートでは近鉄特急に勝つことは到底できません。

なぜJR東海は近鉄特急に対して快速「みえ」を走らせるに留まっているのでしょう。

次はその理由を考察します。

 

 JR東海が近鉄に対して本気で対抗しない理由

儲からないから

JRと近鉄が競合する三重県はそこまで人口が多い地域ではありません。

そこまで市場規模の大きくない場所で複線化、電化されている路線が競合すればお互いを食いつぶすことになるでしょう。

なのでJR東海としては儲からないの路線に対して複線化、電化するなどの設備投資をする必要が無いのです。

関西本線は名古屋から河原田まで全区間複線化する計画があり、伊勢鉄道伊勢線も全区間複線化するための用地が確保されています。

紀勢本線、参宮線も一部区間は複線で開業した後単線化された歴史があるため、快速「みえ」が走るほとんどの区間を複線化することは物理的に可能です。

しかし、複線化したところで大きく利用客が増える見込みはなく、ただ赤字が増えるだけとなってしまいます。

特に紀勢本線と参宮線はJR東海管内ワースト2位,3位を争うような赤字を垂れ流しているため、大規模な設備投資が行われるとは考えられません。

▲近鉄が幅を利かせている三重県ではJRの利用客が極端に少なく、紀勢本線ですら昔は1両編成の気動車で運行されていました。

 

伊勢志摩地方の開発にそこまで力を入れていない

近鉄にとって伊勢志摩地方は沿線屈指の観光地であり、長年にわたって観光開発を続けていた地域です。

ホテルやレジャー施設、交通機関などありとあらゆるものに近鉄資本が惜しみなく投入されています。

近鉄がしまかぜや伊勢志摩ライナーなど多種多様な特急列車を走らせまくっているのは、こうした近鉄関連の施設でお金を使ってもらうためです。

一方、JR東海ににとって伊勢志摩は管内の一地方に過ぎず、近鉄が観光開発しまくっているため、これ以上開発する余地がありません。

JR東海関連の施設が近くにあるわけではないのでこれ以上本数を増やしたり、「しまかぜ」のような豪華な観光列車等を運行させる理由もないのです。

快速「みえ」は名古屋から伊勢志摩を結ぶ列車というよりは、名古屋から鳥羽までの各都市間移動がメインのようにも思えます。

 

 総括

JR東海が快速「みえ」は三重県内の自社保有路線の利用促進を図りつつも、赤字は最小限に抑えることを考えた結果運行されている列車だと思います。

民間企業である以上赤字を放っておくわけにもいきませんが、かといってバチバチに近鉄とやりあっても利益が増えるどころか赤字が増すだけです。

そのため高性能気動車を導入し、近鉄の特急よりは遅いが料金は安くて急行よりは速い快速列車を走らせることがJR東海にとっての最善策なのです。

競合している近鉄に対してはシェアを奪うというつもりは無く、譲るところは譲り一定のアドバンテージを維持することによって、上手く近鉄と競合していると思われます。

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