【Gif動画】ニコ生主TEDZU「富士山1500m滑落」事故動画生配信まとめ
スポンサーリンク 【目次】クリックでジャンプ!- 富士山頂から滑ってみた。
- TEDZU(テツ)
- シミュレーション
- 滑落
- 跳ねたらアカン
- 現場検証
- 冬富士とは?
- なぜ1500mなのか?
- 冬山の魅力
- 彼が助かる方法は2つ
- 当日の様子
富士山頂から滑ってみた。
TEDZU:塩原徹(47歳無職)。お鉢巡りでアイスバーンの斜面をアイゼンつけずに歩きスマホ……
「よし、逝くぞ」冬富士名物1500m滑落を生きたまま生中継するという、前代未聞の動画が配信された。
彼を非難する声も多いが、誰にでも間違いはある。今後多くの登山者の滑落を未然防止する啓蒙動画を残したという、社会貢献度の高さを評価すべきだ。
秋は冬山富士山は初冠雪後からが危険である。 ※おおむね10/1前後富士山は独立峰のため風を遮る物がなく、秋からは極寒の強風が吹き荒れ閉山する。2019年では、山頂付近は10/22に初冠雪が観測済であり、事故当日の10/28はすでに「冬山」であった。
(Wikimedia Commonsより引用)日本で一番寒い都道府県は、北海道(冷帯)ではない。静岡県だ。
富士山頂付近の静岡側は海から近く、冬には海から極寒の風がダイレクトにブチ当たるので気候区分では、「寒帯」に属する。つまり”日本にある北極”なのである。10月に富士山に登るのであれば、北極の10月に行く装備でなければならない。
名物「1500m滑落」(https://www.youtube.com/watch?time_continue=3&v=64ekKwRIXHQより引用)このGif画像は彼ではないが、彼の滑落現場から遠くない場所である。登山者のすぐ脇で滑落事故が起こっている。(わかりやすいようにスロー再生にした)
「滑り出したら止まらない」ことをイメージできると思う。実際は新幹線並みの速さなのでカメラが追いついていない。
そして、このような滑落事故は決して珍しくはない。
彼だけではない冬富士での滑落は定期的に起こる。2年間で6名も滑落死することがあった。
例)2016/11/20 2000m滑落で2名死亡2016/12/4 500m滑落で1名死亡2017/1/1 滑落(?m)で2名死亡2017/5/5 滑落(?m)で1名死亡
表に出ないような軽度の滑落などは、日常茶飯事である。
死の滑り台まずは彼の滑落地点を見てみよう。かなりの急斜面である。全体がアイスバーンとなっていた。
これは、彼の滑落画像である。斜面がスケートリンクの如くツルツルなのがよくわかるだろう。
「急斜面+ツルツル=滑落」滑落は些細なスリップから始まり、どんどん無慈悲に加速していく。
この後、どうなったか?
もうどうにも止まらない(https://www.youtube.com/watch?v=l-dMVvvIt8Mより引用)このGif画像は彼ではないが、下半身が千切れて転げ落ちている。滑り始めは人間の形をしていても、1kmも滑落すればこの状態だ。それでもまだ、止まらない……
ニコ生主の遺体は頭と下半身が欠損し、性別すら判別不可能だったためDNA鑑定で身元を確認したという。
こんなに恐ろしい「死の滑落」を生中継した人物とは?
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2016年好きな女生主と2人で富士登山。その思い出に浸るため、その後何度も富士山にソロ山行。
2018年直腸癌(stage4)から回復。
2019年 10/28 滑落事故
塩原徹(しおはら てつ)47歳無職(東京都新宿区在住)。「自分の証」を残すためニコ生主となるが、その目的は皮肉な形で達成された。
リスナー「テツさんも不安を持って生きてた」
なぜ無謀な登山を?47歳無職、独身、Stage4の癌、10年以上司法試験に滑りまくり、リスナーたった数人の過疎放送……
新宿というコンクリートジャングルで家賃2.5万円の独り暮し。大家によると、友達の出入りも仕事をする気配もなし。死んでいたも同然の人生を送っていた。
彼はなぜこの時期に無謀な登山をしたのか?おそらく、命の危険を感じる行動をとることにより、「生きていること」を実感したかったのだろう。
何度も登った夏富士の難易度では、「生」を実感できなかった。リストカットにより流れる血を見て「自分は生きている」ことを再確認する行動と似たような心理ではないだろうか。
「孤独や恐怖はない?」「大丈夫。東京にいたほうが孤独だもん」「滑るな、ここ」
滑るのは、司法試験だけにしたかった……
あの日10月28日8時頃 新宿駅出発「河口湖駅で乗客居なくなった ビビる」「富士山行きます 雪深そうw」10時半 吉田口から登山開始「バス酔で気分悪い もう帰りたい」14時半 山頂(浅間神社)14:40 お鉢巡りで滑落
10月30日 遺体発見
実力を過信雪の富士山をノーアイゼンで4時間で登頂……夏のようなジジババ渋滞がないとはいえ、47歳にしてはかなりの体力である。
年齢にしてはずいぶん若く見える。この写真なんか20代にも見える。動画の声や喋り方も20代そのもの。この年で無職であることからも、「若い」というか「幼い」のかも。
体力で登れる高山上級者「つまんねー山」「近くの山登って眺めるほうがいい」
富士山が他の3000m峰と違うのは、完璧に確立されたルートがあり、独立峰なので見通しが良く、霧さえ無ければ道迷いもしない。その点が、北ア南アの3000m峰と大きく異なる。
彼はトレーニングを積んでいたようで、体力にはかなりの自信を持っていた。
しかしそれが、命取りになった。10時半登頂開始って、高尾山じゃないんだから……
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オレは彼の動画を見て反省した。危険地帯で歩きスマホなどはオレもやっていた。
今後、彼の動画で救われるのはオレかもしれない……ゆえに彼の滑落事故を徹底分析せずにいられなくなった。10月で晴天無風なら、油断するのは仕方ない。
問題点は2点「装備」と「時刻」である。
服装はジジババが紅葉を見に行くレベル。さらに、12時前には下山開始しないといけないのに、14時半からお鉢巡りを開始してしまった。
装備スニーカー・トレッキングポール
(アイゼンなし・ピッケルなしスパッツなし・テントなし)
この装備では、冬は標高700mが限界。彼が歩いていたのは標高3700m……許容範囲を3000mもオーバーしており、「足りない」というレベルではない。
時刻3776mの山頂から2400mの富士宮口まで夏は3時間、冬は6時間が目安。
冬富士を速足で下るのは、装備万端のベテランでも無理。新雪でキシキシしてれば4時間くらいだが、それすらアイゼンなしでは不可能。
凍っている場所は下りの方が時間がかかる。できれば、登りの1.5~2倍の時間を確保したい。
既に遭難していた14:30に山頂にいる時点で「詰み」。
10:30登頂開始では、途中で引き返さないとビバーク確実である。冠雪のエリアを進んでいる時点で、彼はすでに遭難状態だった。
しかし、遭難しているという自覚を持てず、パニックを起こしている自覚も持てず、お鉢巡りへと進んでしまった……
17時には真っ暗にこの時期の富士山は、16時半から一気に暗くなり始め、17時には「真っ暗」になる。山の暗さは街の暗さと違い、本当に「何も」見えなくなる。
周りのガチ登山勢が次々に引き返しているにもかかわらず、彼は進んだ。
彼が山頂に着いたのは14:30であり、真っ暗になるまで2時間半しかない。山頂からすぐに引き返したとしても、間に合わなかった計算になる。
おそらく、お鉢を回り終えた頃にヘッドライトをつけて、その明りで下山する予定だったと思われる。また、夏と同じ感覚で下山を3時間以内で済ませるつもりだったのだろう。雪がなければ2時間半でも下れるが、このコンディションで、ノーアイゼンで暗闇の中、ダッシュで下るのは危険すぎる。
昼に溶けた雪は日が暮れて固まり始め、夜にはアイスバーンとなる。アイゼンをつけていない彼はお鉢で滑落しなくとも、いずれ下山途中で滑落していたはず……
奇跡的にバス停まで着いても、最終バスに間に合わないので、そこで一泊しないといけない。バス停の標高は2400mなので、疲れと安心で寝てしまえば凍死だろう。
スポンサーリンク滑落
一瞬ためらって「よし、行こう」。
ここが人生の分かれ道であった……引き返して110番通報していれば、奇跡のワンチャンスがあった、かも。
「滑る!」彼の人生最後の言葉である。司法試験に富士山。思えば、滑りっぱなしの人生であった……
生配信と同じ感覚で見られるように、このGifは等速にしてある。では、検証していこう。
滑落直後スリップ直後に、トレッキングポールを突き立てたが、虚しく空振りに終わる……ここは反転してうつぶせになり、加速前に岩を掴みにいくべきだった。
しかし、このグローブでこの温度では指先の感覚が無くなるくらい冷たく痺れていたと思われるので、チカラが入らないかも。
心理状態おそらく、「滑ってもすぐ止まる」と人生最大のカン違いをしていたのではないだろうか?
その根拠は、初期にトレッキングポールで停止しようとしたことだ。素早い動作が感じられず、あまり焦った様子がない。スキー場でコケた時のように、スノボ初心者のお姉ちゃんの如く、雪の摩擦力を使って尻で止まろうとした。
さらなるカン違い死の滑り台にセットされるまで、彼の心理では「まだ助かる」と勘違いしていたのではないだろうか。
滑落死を予感していたら、大慌てで「うつ伏せ」になるはず。ビデオには凍った斜面しか映らないはず。
本来ならば、転倒した瞬間に「うつ伏せ」で抵抗を増やし、ピッケルを刺して加速を抑える。この場面で正面など向いてはいけない。向いても意味がないから、貴重な秒数を消費してしまう(後述)。
最初の5秒(7m)までにピッケルが刺さらなければ絶望的だ。10秒後には車より速くなっており、ピッケルが跳ね返される。こうなったら完全に「運任せ」になるので0.1秒でも早く止めないといけない。
死の滑り台にセットされた瞬間滑落停止動作をせず、凍った急斜面で「尻セード」というタブーを犯してしまった。
禁断の尻セード……アイスバーンでは、雪がない。「尻=ボール」なので跳ねて転がるだけ。決して、尻をつけてはならない。
尻をつけていいのは安全な場所だけ。
無言に……視聴者にあれだけ饒舌だった彼が、滑り始めてから無言のままだ。もう止まらないことを「本能」で感じ取ったからだろう。そして今から自分が行く大斜面を括目し、「絶句した」のであろう。
彼の心理状態としては、ここで初めて自分が遭難したことに気づき、この瞬間で、死を自覚したと予想する。
スポンサーリンク跳ねたらアカン
たとえ滑り始めでも、跳ねたらオワリ。うつぶせの方が圧倒的に跳ねにくい。尻より痛いけど、我慢だ。
人間は空中では「何も」できない。尻だと岩で跳ねて空中に浮いてしまう。一度跳ねてしまえばもう手も足も出ない。あとは無慈悲な高速回転が待っている。オレは真冬の北アで空中大回転して右ヒジがはがれてしまったことがある。(スノボだけど)空中で回転したらもうオワリ……どっちが地面かなんてまったくわからないから”思いっきり”頭を打ってしまうだろう。オレはたまたま腕からついて骨折で済んだが手を着いた瞬間、本能的に腕が壊れたのがわかる。岩場で滑落したら肉塊になるのもうなずける。
1回転目(3秒後)身体が思いっきり起き上がっている。おそらく、両足を揃えて岩で止まろうとしたのだろう。人生最後の行動だった。
しかし、岩は凍っているのであっけなく通過。その岩はジャンプ台となり、ボール状の尻が乗り、彼は「跳ねて」しまった……3秒で助かる見込みはなくなった。無理かもしれないが、この岩は抱きかかえにいけるラストチャンスだった……彼を殺したこの岩が、逆に救ってくれたかも。
正面を向くのは、これで最後。1度回ったら、もう回転は止まらない。1500m滑落後に止まるまでひたすら高速回転し続ける。
つまり滑落が始まった以上は正面など向いても意味がない。
2回転目ここに左尻を乗り上げて2回目の回転。2回転するのに1秒もかかってない……
こんなに小さなデコボコでこんなに大きく回転するとは驚いた。
地面に対して、空が右斜め上に映っている。つまり、もう横向きの回転が始まっている。
というか、この靴ではつま先が凍るくらい痺れていたのではなかろうか。ソックスもアルパイン用じゃなさそうだし……
3回転4回転……3回転目……下に落ちつつ右回転しながら、トレッキングポールが投げ出された。4回転目……今度は左回転しながら、iPhone?が投げ出された。GoProで撮影してスマホ経由で、ニコニコ生中継していたらしい。だからスマホが映っているのだ。
すでに360度×360度の無慈悲な立体回転が始まっている……
ラストシーン続いて5回転を終えて6回転目に……頭が空中で真下を向いたところで、放り出されたスマホと「GoPro+彼」が離れてwifiが届かなくなり、動画がフリーズ。
この後、身体は打たれ、肉体は裂け、骨は砕け、胴体だけになって発見された。
ここまで、「滑る!」からわずか7秒……最初の回転から4秒で5回転である。思った以上に回転が速い。後はひたすら加速するだけなので、回転も滑落も止まらない。
滑落開始から頭部を失うまで、徐々に徐々に擦りおろされていくので、かなり痛かったと思われる。激突して即死できるような大岩は、滑落開始地点⇒終了地点の直線上には、残念ながら見当たらない……
滑落遺体を見慣れている救助隊員ですら、「性別不明」と表現した。彼らなら身体の一部でも男女の区別くらいつくはず。内蔵も全部抜けた筒肉状態だったのだろう。
スポンサーリンク現場検証
皆さんが現場の状況を疑似体験できるように試みたい。
国土地理院地図彼が滑落を開始したのは、お鉢のちょうど真東あたり。現場に沿って崖があるようだ。遺体発見現場は太陽館から南に800m。小山町の「山」のやや北あたりだ。
図解すると、こうなる。動画では単なる岩場と勘違いしてしまうが、地理院地図では崖が記載されており、映像でも崖は確認できる。
後方から検証もう1度、尻セードの画像を見てほしい。ほどんど雪で埋まっているが、左側に崖が続いている。
斜めから検証滑落開始地点はこれまでの道よりも急斜面になっているのがわかる。
事故当日はぶ厚い氷雪で埋まっている。右上の巨大な岩が大きな日陰を作っているからこのエリアは青氷(ブルーアイス)になりやすそうだ。青氷の巻き道を進むならば、アイススクリューが必要である。
7合目あたりで雪質が変化し、摩擦が生じて停止したと考えられる。北アでもそうだが、登山道が凍っている場合、巻き道は危険なので直登コースが第一選択となり、春夏秋の3シーズンと冬ではコースが変わる。
スポンサーリンク冬富士とは?
冬富士といえば、突風とアイスバーン。
夏はジジババがピクニック感覚で登り、冬は上級者がヒマラヤ登山の訓練に使う。
夏は仏、冬は死神……夏と冬でこれほど難易度に差がある山は世界的にも珍しい。
猛烈な風周囲に風をさえぎる山がないので冷たい風がダイレクトにぶつかる。
冬は気温-20~30℃、風速20~40mくらいが目安。低温よりも、むしろ暴風がツラい……たとえば気温-30℃で風速30mなら、体感温度は-50℃である。
ひとたび天候が悪化すれば、北西からの季節風が風速50m以上、-40℃以下で襲いかかってくる。ヒマラヤ8000m峰の風に等しく、何時間も一歩も歩けない状況となる。そのまま日が暮れてしまえば……
さらに、高さによる酸素不足で頭痛・めまい・眠気が襲い掛かる。つまり天候予測の失敗は「死」を意味するが、突風だけは予測のしようがない。
風速と行動(Wikimedia Commonsより引用)天候が悪化した場合は、気温がマイナス数十度の氷の急斜面で台風の中を歩くことを想像してほしい。
上級者なら風速30mまではなんとか行動できるが、40mになると吹き飛ばされかねない。(強い台風=風速44m~)50mを超えれば「猛烈な台風」とほぼ同等であり、行動は不可能……ちなみに風速10m(登山OK)、15m(登山注意)、20m(登山中止)が目安。25m以上は、可能だが命懸けの行動になる。
「風速○m」というのは、あくまでも「平均値」でしかない。実際は強くなったり弱くなったりする。
もっとも怖いのは「突風」であり、瞬間的には風速○mの数倍になる。富士山は独立峰であり、風を遮るものがなく、局所的な突風が発生しやすい。平均で35m以上ならI wish I were a bird……コルや稜線、頂上付近など風が集まる場所で突風がその願いを叶えてくれるだろう。
実際、突風による滑落も多く、冬の富士山は夏のエベレストより怖い、という登山家もいる。夏のエベレストより冬富士のほうが想定外の事態に対処しにくい、ということだろう。エベレスト登頂は、ほとんどシェルパの力だし。
アイスバーン(https://blogs.yahoo.co.jp/fujisanski/26724924.htmlより引用)日向と日陰を繰り返すことで、溶けたり締まったりを繰り返して平らな急斜面を形成していく。氷雪は夜中にカチカチに固まり、強風で磨き込まれてピカピカになり、アイゼンやピッケルを無慈悲に跳ね返す……
富士山の上の白い部分は、遠くからだとサラサラの雪に見えるが、近くで見るとカチカチの氷なのである。
8合目から特に危険(https://www.flickr.com/photos/84263554@N00/518841549より引用)厳冬期(1・2月)の8合目以上は、コンクリート以上に固い氷になる。
水色のラインが、おおむね7合目と8合目の境界である。
宝永山火口の上端までのエリアは地面の筋が見える。彼の滑落が止まったのもその高さだ。そこから上は真っ白で雪の厚みが全然違うのがわかると思う。何シーズンも使い倒して丸まったアイゼンは危険。ピンピンに磨いた爪ですら、1mmも刺さらなかったりする。
さらに強風で身体も浮きやすいし、突風で吹き飛ばされることもある。「てんきとくらす」では稜線の予測がつかず、風が強い・弱い程度の目安にしかならない。荒れた稜線は微風・突風・暴風と変化するので平均風速などアテにしてはならない。
とはいえ、冬は天候次第……天候が良ければ中級者でも登頂可能だし、悪ければプロでも死線を越える。-20℃以下で暴風の日もあれば、ー5℃以上で微風の日もあって極端である。つまり、天候予測・登山計画の時点で出発前から「命が懸かって」いる。しかし彼は登山計画すら立てず、その場のノリで登ってしまった……
タイミングが悪かった彼が登ったのは厳冬期ではないが、冬山となった富士山頂である。場所とタイミングにより厳冬期並みに危険な場所はある。
現場は東側の斜面だから、午前~昼に日が当たる。そのときは雪の道だったことだろう。直射日光で溶けた雪は平らになって締まっていく。午後になると東側は日陰となり、急激に冷える。毎日それを繰り返すとアイスバーンになる。あの帽子のようにデカい岩が大きな日陰を作り、一部分だけがキンキンに冷えてしまった。
そのタイミングで通る……彼の滑落事故現場が、まさにそれだ。
スポンサーリンクなぜ1500mなのか?
バラバラでミンチになるような滑落が、あんなささいなスリップから始まるとは……
今後多くの登山者に「引き返す」「中止する」という選択肢を与えた彼の功績は大きい。オレも今冬に行こうとしていた痩せ尾根は延期することにした。
雪質が変わる晩秋の富士山は8合目まではツルツル急斜面だが、7合目付近で氷が雪になりはじめて止まる。
三角定規富士山頂付近(3700m)からの滑落で、遺体は標高差800mの地点で発見された。
富士山の山頂付近は横から見ると、皆さんが小学校の時に使った90°60°30°の直角三角形の定規に近い形をしている。
スキーなら上級コース傾斜は30°であり急斜面の部類だ。イメージとしては、ユルめの階段(公園の階段)が目安。階段でなければ怪我を予感する角度だ。
学校で習った公式に当てはめると、800×2=1600m。
実際は直線よりもヘコんだ円錐形なので、少し短くなって約1500mと予想される。
なぜ高速回転する?これは配信動画で容易に確認できる。
富士山のアイスバーンには、至る所に岩が突出している。巨大な滑り台の上に点在する突起物によって、ぶつかる度に跳ね上げられて回転する。
小さな突起でも大きく回転するので、回転しだすともう止まらない。
石と同じ原理上流の石と下流の石のように、回転により出っ張った部分が削れて丸くなっていく……人間でいえば、頭部や手足にあたる。
捜索隊「滑落遺体の多くは胴体しかない」
なぜ途中で止まらない?(Wikimedia Commonsより引用)富士山は独立峰のため、円錐形である。アイスバーンの上をほとんど宙を舞う形で滑り降りるので摩擦係数は無視できる。
3700mもの膨大な位置エネルギーが無駄なく運動エネルギーに変換されていく。そのため重力加速が大きく、時速200km以上に達するといわれる。これは新幹線並みのスピードである。
アイスバーンの途中で止まる方が逆に不自然だ。
スポンサーリンク冬山の魅力
日常のくだらないストレスを全部忘れるにはどうすればいいかって?答えは簡単だ。命が懸かるようなことをすればいい。
そうすれば、目の前に300%集中せざるを得ない。くだらないことは頭から全部ふっとぶ。雪があると、なぜか無心になれる。
非日常による日常からの開放感……危険が大きいほど、開放感も大きい。「危険がある趣味」というのは、そういった中毒性がある。
逆に、危険が少ないと物足りなくなる。だから危険とわかっていてもやめられないし、どんどん新しい危険な場所を選んでしまう。
下りが危険下れるのか?
登る前に考えなくてはいけない。下る方が難しいからだ。初心者は登ることばかりを考えがち……「無理なら引き返せばいいんで!」「行けるトコまで行ってきますw」登れるトコまで登っちゃったら、引き返せないんだよ……
事故の大半は下りで発生する。特に冬は「登れる」からといって、「下れる」とは限らないのである。
下りというのは、夏は登りより速いが、冬の凍った斜面では遅くなる。
オレも山をナメていた冬にいつもの山で回り道するのが面倒で、土砂崩れで立ち入り禁止なのに、「冬は凍ってるから濡れなくて済むw」と考え、いつも凍った沢の斜面を横断していた。冷静に考えると、死の滑り台でしかない。
山で歩きスマホ一歩一歩魂を込めてステップすべきなのに、「ここでコケたら死ぬw」などと凍った急斜面を面白半分でラインで送り、アイゼンに頼りスタスタ歩いていた。
ほぼ垂直の鎖場で片手を離してスマホを出し、ラインで景色を送ったり……歩きスマホで氷雪を進む彼とオレは、まったく同じだったのである。
す、滑る……!あの感覚、すごくよくわかる。凍った斜面はとにかく「無慈悲」である。北朝鮮の砲撃よりも無慈悲である。
「さぁ、スタートだ」という時に、アイゼンを忘れるという大失態……二連チャンだったから干したまま……晴天無風なのに帰るしかない……そのまま帰るのもアレなので、凍った道路を登山靴だけで歩いてみた。
ツルツルのアスファルトは歩くどころか、立ってさえいられず「思いっきり」コケた。彼とまったく同じように無慈悲な斜面でズルズル滑ってしまい、車が来たらヤバかった。道路だったからそれで済んだが、彼はアレをスニーカーで進んだのか……
スポンサーリンク彼が助かる方法は2つ
パラシュート作戦と股間作戦である。
パラシュート作戦は現実的でないが、股間作戦は現実的な方法である。
パラシュート作戦(https://www.jili.or.jp/kuraho/2005/essay/e2005_12.htmlより引用)加速した後で求められる道具は、アイゼンでもピッケルでもなく「パラシュート」である。
実際、プロスキーヤーの三浦氏が富士山頂からパラシュートを使って滑降に成功している。
須走ルートに方向が合っているので、良いタイミングでパラシュートを開けば日が暮れる前に下山を完了できた。
(https://www.youtube.com/watch?v=JIFeyVf3aeYより引用)岩にぶつからなければ、だが。
股間作戦彼は助かった方法はコレだと思う。映像の脇作戦ではなく、股間で手を暖める作戦だ。救出シミュレーションをしてみよう。
初心者は真冬にグローブが濡れる怖さを知らない。予備のグローブを持っていない場合が多いし、彼のように保温力が足りていないことも多い。
脳が活性化タマタマをモミモミしたり、棒を握ってたりしているうちに性欲が刺激され脳が充血。脳の酸素不足が一時的に解消。と同時に、思考能力低下が改善。
富士山頂でチンチンを握りながら、我に返る……「オレこんなとこで何やってんだろ?」と自分を客観視できる状態にまで回復。
快調に進んでいた足取りを突然止めて、混乱し始める。見かねたリスナーが警察に通報。
生配信の威力彼の装備と場所を聞いた捜索隊は救助活動を断念……
しかし、ネットで大騒ぎになり、テレビでも騒がれ始めた。おまけに、彼の様子はゴールデンタイムにて、生配信の最中である。
今どきは小学生までスマホを持っており、子供たちまで彼の状況を心配しはじめ、激励のコメントが殺到し始めた。
世論が味方に全国の警察署で110番が鳴り止まない。「いつ救助に出発するの?」「まだ出発してないのかよ!」一般人は冬山捜索の危険性など知らない。「見捨てる」選択肢など毛頭ない。
このまま生配信を続けられると、全国民が死にゆく状況をナマで見ることになる。そんなものを子供に見せるわけにいかない。「早く助けに行って!」母親たちからも苦情が殺到し始めた。
もし行かなければ捜索隊は「見殺し?」「信じられない!」「何のためにいるの?」「税金泥棒」などとボロクソに叩かれるハメになる。
もういかなる状況下においても、救助せざるを得ない世論になってしまった。
アタックチーム結成(https://www.royalmountaintrekking.com/より引用)8合目付近にベースキャンプ設置。アタックチームを組み、夜間強行。なんとか世論の沈静化に成功。(https://www.nationalgeographic.comより引用)鳥居の所で待ち合わせ、彼を回収……温かいスープを飲ませ毛布で包み下山。ベースキャンプで待機組に中継。
5合目に停めていた車で麓に到着。車中はずっと説教だったが、温泉に入って疲れを癒やし、キンキンに冷えてた風呂上りのビールをやっつける。
その後……彼は盛大に叩かれるが炎上商法に成功。膨大な視聴者から固定ファンが残った。無職ニコ生主⇒人気ユーチューバーへ転身。
手を突っ込む場所さえ正しければ、人生大逆転……のはずだった。
ちなみに、股間に手を入れて温めるのは植村直己もやっていた方法であり、非常に有効な手段である。
真夏でも凍死(Wikimedia Commonsより引用)麓では37℃の猛暑で海水浴中でも、山頂は5℃、夜中は0℃以下まで下がる。平地の12月くらいの寒さであり、雨に濡れれば凍死の可能性がある。
右下のオネーチャンに着目してほしい。股間作戦で脳が活性化して我に返るのを実感できるはず……
彼がいた時点で山頂は-5℃。この程度は大した低温ではないものの、夜中は-10°~20°、さらに強風で凍死確実……!ゆえに18~24時の間に山頂まで辿り着かないといけないので、救助は夜間に強行するしかない。
スポンサーリンク当日の様子
当日近くを登っていたベテラン登山者のコメントがあった。当日の状況とTEDZUの様子がわかる。
すべて当日の現地画像である。(https://www.yamakei-online.com/cl_record/detail.php?id=179663より引用)
滑落するコンディション『7合目すぎたあたりから積雪。固く締まった雪は10本爪アイゼンが具合よくかみしめるグリップ感。
爪の跡は残るが靴底の跡はまるで残らないので、振り返っても痕跡がよくわからないくらいの雪の硬さ。気持ちよく登れるが滑ったら滑落は避けられない。』
下りが危険だった『登りコースはそのようなところ今のところなかったが、下りは危険なところがあった。画像に映っている足跡は前日のものと思われる。この日このコースを登ったのは私だけのようだった。』
的確な判断『前日の寝不足がたたり8合目あたりから高度障害に苦戦する。頭痛はないがめまいと眠気でペースが激減した。
結局、八号半で13時半を過ぎてしまい、頂上まで登って下山すると完全に日が暮れる時間計算。危険な積雪部分は明るいうちに通過できても、6合から5合目までには台風の影響で登山道が土石で埋まっていたり崩落寸前の個所もあってガスったら非常に危険な状況が予測できた。
もちろんライトは所持していたが9合目手前で下山を決める。下山コースは危険なので登りコースを下る。
案の定5合目到着で日が暮れた、残念だったが判断して正解だった。』
TEDZUを見た『下山中下山コースをソロで登りながら何やら一人しゃべっている登山者が気になった。5~600mは離れていたのでコミュニケーションはできなかった。現時間では、登頂は厳しいのではないかと思った。』
その5日前……10/23(水)リスナー「雪の富士山見てみたい」
テツ「見たい? もう雪降ってるかな」「今まだ寒くない」「パッと行ってパッと帰れば、死なずに済む」「そんなに寒い思いをしないで帰れる」
10/28(月) 滑落事故死
彼は、山をナメていたというよりはあまりにも無知だった……
まとめTEDZUほど極端でないにしろ、登山者なら誰でも初心者の頃に無茶をした経験があるはず。だから彼を責める資格がある人間は少ないはず。
冬富士の滑落は知っていたが、突風からの盛大なスリップで始まり、大きな岩に激突するようなイメージだった。正直な所、10月の晴天なら楽勝と思っていた。しかしあの程度の積雪でも山頂でコケるとこんなになるとは……あんなに些細なスリップから始まり、あんなに小さなデコボコで大きく浮き、あんなにハイペースで回転するとは……高山の岩場や稜線とは様子が全く異なることを、この動画を検証することで、初めて実感した。
津波の動画を見て、初めて津波の怖さを知る……それと同じような感覚である。本当に人間が死ぬ時は「危ない!!」ではなく、「あっ……!」という感じなのだろう。浮き石を掴んで、気がついたら鳥になってた……みたいな感じなのだろう。
動画やSNS配信はどんどんエスカレートしている。燕で「スイカ食べました♪⇒スイーツ食べました☆」程度では、その他大勢に埋もれてしまう。もっと注目されたいから、もっと過激になっていく。おかげで初心者な女のコまで「槍だ!劔だ!」と配信しまくるようになってしまった。槍はともかく剱のそういう配信に釣られてしまい、ソロでルートを外してしまい、18時過ぎに滑落死したコもいた。いまに「初心者だけど馬の背でドキドキ☆」などと本当にやりそうで怖い……
【ランキング】場所/死亡率「世界の8000m峰14座」比較と難易度、ヒマラヤ・カラコルム山脈ヒマラヤ山脈に9座、カラコルム山脈に5座ある。死亡率や難易度はどうなっているのか?①エベレスト(8848m)②K2(8611m)③カンチェンジュンガ(8586m)④ローツェ(8516m)⑤マカルー(8481m)⑥チョ・オユー(81...iirou.com