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(写真:イメージマート)栃木県立真岡北陵高等学校でSNS上に拡散された暴行・いじめ動画の問題は、現在も警察による捜査が続いています。暴力行為そのものが犯罪であることは明白ですが、それ以上に、動画が瞬く間に広がった事実は、現代のいじめがデジタル時代特有の危険性を帯びていることを象徴しています。私たちが目にした出来事は、全体の一部にすぎません。
いじめは「学校」ではなく「デジタル空間」で進化している
いまZ世代が直面しているいじめは、学校の校舎内だけで起こるものではなく、SNSというデジタル空間で進化を遂げています。かつて典型だった「LINE外し」は序章に過ぎず、現在では画像や動画の無断撮影と即時拡散、生成AIによるディープフェイク映像、さらには本人になりすました偽アカウントで過激な投稿を行う“なりすましいじめ”など、手法は高度化し続けています。生成AIの普及スピードを考えると、こうした加害行為は今後さらに増え、学校や家庭の力だけでは対応しきれない領域に広がっていくのは避けられません。
SNSはリアルな対人関係の延長線上にある“第2の教室空間”
Z世代にとってSNSは、単なる連絡手段ではなく、リアルな人間関係がそのまま展開される“第2の教室空間”になっています。学校での出来事や関係がSNS上で継続し、SNS上で起きた排除や攻撃がリアルの学校生活へ影響する。この双方向の関係性により、オンラインでのいじめは現実世界のいじめと同等、あるいはそれ以上の心理的影響を持ちます。匿名性や閉じたグループによって外部から見えにくい構造で行われるため、大人の目が届かないまま被害が進行し、被害者自身が深刻さを認識する前に精神的負荷が蓄積されていくという問題も深刻です。
大人が把握できない“見えない暴力”が拡大している
こうしたSNS上のいじめは、従来のように教師や親が教室・家庭で気づけるものではありません。投稿は瞬時に消され、アカウントは複数使い分けられ、証拠も残りにくい。学校の廊下の陰ではなく、SNSという“見えない廊下”でいじめが進むため、教員やスクールカウンセラー、警察でさえ初動が遅れがちです。表面化した頃には関係性が複雑化し、心のダメージが深くなっているケースも珍しくありません。
Z世代に求められるのは「関係性のリテラシー」
このような環境だからこそ、Z世代にはSNSの文脈を理解し、歪んだ関係性に巻き込まれない力が求められています。情報の拡散がもたらす影響を正しく読み取り、冗談と攻撃の境界線を見極め、他者の尊厳とプライバシーを守る姿勢を育むことが、現代における“デジタル人権教育”の核になっています。単なる道徳教育ではなく、オンライン上の人間関係の構造を読み解くリテラシーが必須の時代です。
個別の事件ではなく、社会全体が取り組むべき課題
今回の県立高校で起きた暴力とSNS拡散の問題は、特定の学校だけに起きた例外的事案ではなく、デジタル社会における構造的課題を浮き彫りにしたものです。学校や家庭の努力だけで解決できる段階はすでに過ぎており、行政、教育機関、テック企業を含め、社会全体でデジタル空間におけるいじめ対策を再構築する必要があります。