用廃機ハンターが行く!
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<編集履歴> 18Jan.2026公開、27Jan.2026見直し更新(第2回目、見直し実施)

 

【はじめに】

 王立空軍博物館には実機のほか、レプリカや無人機を含めて100機を超える機体が展示されている。この記事ではその中から「実験機」と「自国開発機の試験機」を紹介しよう。

 実験機とは「何から手をつけたら良いのかわかんないから、とにかく手を付けてみよう」といった感じの機体。「自国開発の試験機」は、既存の機体の一部に手を加えたとか、エンジンを換装してみたというものだが、こういう経験が次世代に花を咲かせるのだろう・・・。(花、開くかな?>タイの航空産業)

 タイ空軍独自の命名法分類によると実験機は"B.ChOr.XXX"、試験機は"B.ThOr.XXX"と表記される。試験機は制式採用されると新たな機体名が命名される。「十二試艦戦」が「零式艦上戦闘機」となるようなモンだと思ってくれればよいだろう。これらの機体を紹介する。

 

【実験機】

(1) パズマニーPL-2(B.ChOr.1, PL-2, cn.1971/72)

 航空機製造の手習い用に購入したとされるホームビルト機。その知見はRTAF-4(後述)の開発に活かされたというような説明板があった。航空ファン誌の解説では「”1974”年に1機だけ製作され、89年まで使われた」とされるが、説明板には"1973-1989"と書かれていた(2025年3月6日確認)。1973年調達、1974年になってから完成というコトですかねぇ。重箱の隅突きだけれど、歴史調査にはこういう「僅かな違い」が頻繁にでてくるので面白い。何を元に調べて書いたのか?ということも調査対象だ。

写真1(2025年3月6日撮影)

 

(2) B.ChOr.2

 博物館には展示されていないが、「実験機第2号機」の紹介だけを記述しておく。本機はRTAF-6を設計製作する前に"ライセンスを得て"、”リバースエンジニアリングで造った”イタリアSIAI-Marchetti SF.260MTのタイ空軍における名称。日本の航空機開発史における「FS-T2改」と同様の「プロジェクト名称」と言っても良いかもしれない。塗装は黄色に近いオレンジ色であった。「リバースエンジニアリングで造った」と書くとカッコ良いが、「見よう見まねで造った」のではないかと思っている。詳細は未調査なので、先入観は捨てて対応したい。>自分

これに続き試作機 (B.ThOr.6)を3機製造、さらに量産型3機が造られた(後述)。

 

【試験機】

  博物館に展示されていない機体もあるが、タイ空軍の命名法に残る試験機6機種を紹介しておく。

(1) RTAF-1(B.ThOr.1)

 のちに爆撃機B.Th.2として制式化されるParibatra(ブレゲー14のエンジンを廉価版に変えたタイ独自の複葉複座爆撃機)が試作機であった時期の名称。当時、”RTAF-1”という英語名が付いていたかどうかは不明(タイ語のB.ThOr.1は付与されていた)。詳しいことはまだ調べていない。B.Th.2 Paribatraのレプリカは存在するため、その説明は別記事(古典機編)で述べる。

 

(2) RTAF-2 (B.ThOr.2)

 V字尾翼のビーチクラフトボナンザを普通の尾翼にした機体で、SNなどの数字は記入されていない。これでどんな結果が得られたのかな?試験機であれば、操縦性が良くなった/悪くなったとか、構造が複雑になった/簡易になったとか、重量の増減があったなどの「試験・評価の結果」が、どこかにまとめられているとは思う。もちろんタイ語で。実験機や試験機の場合には、その辺りまで突き詰めて調べることができれば、面白いと思う。

写真2(2025年3月6日撮影)

 

(3) RTAF-3 (B.ThOr.3)

 RTAF-2を発展させた連絡機の予定だったが、風洞実験段階でキャンセルとなった。実機は存在しない。”プロジェクト名”だけと言って良いだろう。

・参考URL: RTAF 3

 

(4) RTAF-4 Chantra  (B.F.17-3/17, 03)

 チップマンクT.20を元にして、エンジンを更新したほか、あちらこちらの形状をいじっている。試験機第4号(B.ThOr.4)であったが、制式化採用されたため、タイ空軍での名称はB.F.17となっている。展示機は12機が生産されたうちの量産型(すなわちB.F.17の)3号機にあたる。計器盤に"Chantra 03"と残っているそうだ。

写真3(2025年3月6日撮影)

 

(5) RTAF-5 (B.ThOr.5)

 見てのとおりOV-10"ブロンコ"を単発プッシャー式にしたような形の試験機。その特異な形態から日本の古参マニアの間では比較的よく知られているように思う(”ブロンコもどき”などという)。”思ったよりも”性能が悪く、開発中断となった。タイ空軍ではOV-10Cを運用していたため、”OV-10の改造型”と称する方がいるが、RTAF-5はそれより一回り小さく、また華奢な造りに見える。OV-10のフレームを使って開発したのでは無いようだ。博物館内にはOV-10Cも展示されているので、細部まで見較べて来よう。

写真4-1/-2/-3 OV-10Cのような形状だが、”アカの他人”。(2025年3月6日撮影)

 

(6) RTAF-6 (B.ThOr.6)

 イタリアSIAI-Marchetti SF.260MTのエンジンをターボプロップ化した機体で試作機 (B.ThOr.6)が3機、量産機3機の合計6機が製造された。試作1号機と試作3号機が展示されているが、この”試作3号機”は、従来”試作2号機”とされていた機体だ。首脚柱に"Serial No.003"というステンシルが見つかったことで、本記事を書く際に参考としているThe Thai Aviation Websiteの博物館展示機情報(2025年09月19日版)では”試作3号機”と再定義している。試作1号機~3号機では機首下面のインテイクの形状が少しづつ異なるようだ。

 量産機はドンムアン基地の第604飛行隊に配備されている。当初予定では25機くらい造るつもりだったようだ(製造予定を30-40機とする説もある。タイのことなので、高官が吹いた数値をそのまま報道したのだろうと考えている)。

写真5-1, 5-2 RTAF-6の試作1号機は当初屋内に展示されていたが、現在は屋外に置かれており、褪色し始めている。(5-1: 2017年7月16日、5-2: 2025年3月6日撮影)

 

写真5-3 RTAF-6の試作”3号””は屋外に置かれている。前輪は取れて無くなっている。従来”2号機”とされていた機体だが、2024-25年頃に首脚柱に"Serial No.003"というステンシルが見つかり、再定義された。垂直尾翼の取付部前方(胴体のラウンデル上方)のタイ語は「B.ThOr.6」。( 2025年3月6日撮影)

 

写真5-4/-5/-6 3機の量産型RTAF-6はドンムアン基地第604sqn.に配備され、同基地公開日に見ることができる。胴体右側は英語、左側はタイ語で「タイ空軍」と書かれている。尾翼の”6”マークはRTAF-6の”6”を表しているのだろう。(5-4: 2020年1月11日、5-4: 2019年1月12日、5-6: 2026年1月9日、撮影)

 

【最後に:王立空軍博物館の展示機紹介に関する当Blogでの記事について】

(1) Topで記した通り、ここには100機を超える機体が展示されている。そこで当Blogでは展示機を次のグループに分けて、紹介記事を作成している。

・全般的な話(アクセス、開館日、一般事項など)

【Bangkok】王立空軍博物館 - 用廃機ハンターが行く!

・自国開発の航空機:本記事です。

・タイ空軍創設からおおむね1970年頃までに活躍したプロペラ機

【Bangkok】王立空軍博物館の展示機(古典機・大戦機編) - 用廃機ハンターが行く!

・ジェット戦闘機(F-5シリーズを除く)

【Bangkok】王立空軍博物館の展示機(ジェット戦闘機編、F-5シリーズを除く) - 用廃機ハンターが行く!

・F-5シリーズ

【Bangkok】王立空軍博物館の展示機(F-5シリーズ編) - 用廃機ハンターが行く!

・攻撃機

【Bangkok】王立空軍博物館の展示機(攻撃機編) - 用廃機ハンターが行く!

・練習機(大戦後かつF-5シリーズを除く)

【Bangkok】王立空軍博物館の展示機(練習機編) - 用廃機ハンターが行く!

・輸送機(C-47を含む)

【Bangkok】王立空軍博物館の展示機(輸送機編) - 用廃機ハンターが行く!

・その他の固定翼機(汎用機、偵察機、観測機、AEW、測量機など)

・ヘリコプター

【Bangkok】王立空軍博物館の展示機(ヘリコプター編) - 用廃機ハンターが行く!

・グライダーと無人機、その他

【Bangkok】王立空軍博物館の展示機(グライダー・無人機・その他) - 用廃機ハンターが行く!

(2) 当面は展示機の写真紹介のみとして、記事の骨組みを作成し、次いでSNやタイ空軍独自の命名法(ただしアルファベットにて)の情報を追記する予定です。これを2026年3月末頃までに仕上げ、その後はユルユルと各機体の運用やエピソードなどについて追記していく予定です。そんなワケで、数年したら、もう一度眺めに来てくださいな。

【参考】

(1) ネット上の情報は原則としてThe Thai Aviation Websiteの博物館情報のページ記述を参考にしています。

Thai aircraft | Thai aviation

また機体解説は次のページを参照しています。

Royal Thai Air Force

(2) 国内文献:

・「タイ王国空軍国立航空博物館の展示機Part 1」大路聡、航空ファン2024年1月号No.853、p.88-96。

・「タイ王国空軍国立航空博物館の展示機Part 2」大路聡、航空ファン2024年2月号No.854、p.70-77。

・「タイ王国空軍国立航空博物館の展示機Part 3」大路聡、航空ファン2024年3月号No.855、p.80-87。

・「タイ王国空軍国立航空博物館の展示機Part 4」大路聡、航空ファン2024年4月号No.856、p.80-87。

・「タイ空軍博物館の日本機寸描」大路聡、航空ファン2015年12月号No.不明、p.70-73。

・「ジェサダ技術博物館とバンコク周辺のに本機」大路聡、航空ファン2018年2月号No.不明、p.66-72(空軍博物館情報はp.71-72)。

※「タイ王国空軍国立航空博物館の展示機」シリーズでの機体解説はThe Thai Aviation Websiteの邦訳プラスアルファがあり、むっちゃ詳しいです。

以上

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