「ミセス、なぜ炎上?」日本人だけがわからないコロンブスのヤバすぎる問題とは?
Mrs. GREEN APPLEの新曲「コロンブス」のミュージックビデオが、「先住民を類人猿に見立てているかに見える」「差別的だ」とされ、SNSで炎上、公開停止に追い込まれた。なぜ、そのようなことになったのか。かつては英雄視されたコロンブスだが、いまや欧米でその評価は一変している。何が問題視され、どのような指摘がなされているのか? 世界的ベストセラー『早回し全歴史──宇宙誕生から今の世界まで一気にわかる』(デイヴィッド・ベイカー著、御立英史訳)から、コロンブスに対する、現在の欧米での評価がよくわかる一節を特別に公開する。
鉱山の生産目標を達成しなかった先住民の手を切り落とすコロンブス隊 Theodor de Bry/Wikimedia Commons容赦のない「植民地獲得競争」
15世紀、ヨーロッパでは、国家は黒死病以前のように農民から税金を取ることができなくなり、商人や商業が好ましいものと見なされるようになった。しかし、ヨーロッパ征服をもくろむオスマン帝国がシルクロードを通る貿易の大半を遮断してしまい、ヨーロッパは反発した。
ポルトガルとスペインは、1420年代にはアフリカ沖のカナリア諸島、マデイラ諸島、アゾレス諸島への上陸を果たし、巨大なアフリカ大陸への足がかりを確立しつつあった。
1440年代から50年代にかけて、ポルトガルは西アフリカのマリ帝国と大規模な貿易を開始し、胡椒、象牙、金、そしてアフリカ人奴隷の貿易を行う権益を獲得した。1488年にはバルトロメウ・ディアスがアフリカの喜望峰に到達し、1498年にはヴァスコ・ダ・ガマがアフリカを回ってインドに到達して香辛料を持ち帰った。ヴァスコ・ダ・ガマは敵対するオスマン帝国を迂回することで、東地中海から購入した場合の5%の費用で物品を購入することができた。
アフリカ大陸を迂回する航海の問題は、赤道付近で赤道無風帯と呼ばれる地域にぶつかることである。風が弱く航海に支障をきたすことが多く、危険な雷雨やスコールに見舞われることも少なくない。
従わない者の手首を切り落としたコロンブス隊
そこで別の航路の模索が始まった。1492年、アラゴン王家のフェルナンド2世とカスティーリャ王家のイサベル1世は、ジェノバの探検家クリストファー・コロンブスに航海を委託した。
アフリカに向かわず、西に向かってもインドに到達できるはずだと考えたコロンブスは、8月にカスティーリャを出航して西に向かい、10月にバハマ諸島に到着した。その後、キューバ本島、イスパニョーラ島に上陸した。
コロンブスは先住民に奴隷労働を強い、女性を性的奴隷とし、従わない者の手首を切り落とした。その間、コロンブスたちがヨーロッパから持ち込んだ病気によって島では死者が増えていった。コロンブスは死ぬまで、自分はアジアに上陸したと思い込んでいた。
1519年、スペインの君主はポルトガルの探検家フェルディナンド・マゼランに5隻の船を与え、南北アメリカ大陸を南下し、太平洋に出る航海を命じた。マゼランは広大な太平洋を渡ってフィリピンに到着したが、1521年に殺された。1522年、フアン・セバスティアン・エルカーノ指揮下の1隻だけがスペインに戻り、世界初の地球一周を果たした。
コンキスタドールによる残忍な虐殺
16世紀には、国も投資家も個人も莫大な富を求めはじめ、ヨーロッパや植民地の商人たちがわれさきにとアジアや南北アメリカに進出した。ハプスブルク家のスペインは、こうした貿易ネットワークにおいて主導的な地位を確立し、中南米でもっとも鉱物資源の豊富な地域を植民地化することに成功した。
スペイン、ポルトガル以外では、イギリス、フランス、オランダなども植民地獲得に乗り出した。スコットランドさえ何度か植民地を得ようと試みている。他方、中央および東ヨーロッパの国々は、自国の戦争と地理的な理由で、大航海時代の利益をつかむことがほとんどできなかった。
1519年から1521年にかけて、スペインのエルナン・コルテスは数百人のコンキスタドール(征服者)を率い、ヨーロッパから持ち込んだ火器と伝染病によってアステカを征服した。ヨーロッパの病気に免疫のないアステカ人の多くが死んだことと、コルテスと現地の反アステカ勢力の結託により、メキシコ全土は数年でスペインの手に落ちた。
1532年、同じくスペインのフランシスコ・ピサロがインカ帝国に同様の遠征を行い、やはり火器とヨーロッパから持ち込んだ伝染病によって征服を試みた。インカ帝国は広大で地形的にも攻略が難しかったが、長く残酷な戦いの末、1572年に完全に征服された。(中略)
史上類を見ない規模の文明の抹殺
南北アメリカ大陸では、アフロ・ユーラシア由来の病気が1500年から1620年のあいだに人口の90%を一掃したと推定されている。ヨーロッパ人がやってきただけで、わずか1世紀ほどのあいだに約5000万人が死んだのである。当時の世界人口が5億〜5億8000万人であったことを考えると、その多さは際立っている。
1620年には、南北アメリカ大陸に残された先住民は500万人だけだった。史上類を見ない規模の文明の抹殺であった。アフロ・ユーラシアの病気は、19世紀の全期間と20世紀のはじめにかけて、アメリカ先住民に大打撃を与えつづけた。
(本稿は、デイヴィッド・ベイカー著『早回し全歴史──宇宙誕生から今の世界まで一気にわかる』からの抜粋です)
『早回し全歴史』とは?本書の著者は、歴史を宇宙規模で捉える新しい学問分野「ビッグヒストリー」において、世界初の博士号を取得した博覧強記の異才だ。
「宇宙はどう生まれたのか? 地球は? 月は?」「最初の生命の驚くべき正体とは?」「大航海時代が人類に果たした壮絶な役割とは?」「いまの人類の行動は超大局的視点から見たらいかなるものか?」「1兆年の1兆倍の1兆倍の1万倍後の宇宙の終わりには何が起こる……?」
歴史学から宇宙論、物理学、生物学まで、あらゆる知識を駆使して、ビッグバン以来の「全歴史」を一気に紐解く驚くべき書!
■本書目次より
『早回し全歴史――宇宙誕生から今の世界まで一気にわかる』 デイヴィッド・ベイカー著、御立英歴訳■CHAPTER 1 ビッグバン ─―信じられないほど不思議な始まり ■CHAPTER 2 星、銀河、複雑さ ─―火の球から次々と「星」が生まれる ■CHAPTER 3 地球誕生 ─―どろどろ燃える灼熱の玉 ■CHAPTER 4 生命と進化 ─―その目を見張るような奇跡 ■CHAPTER 5 繁栄と絶滅 ──次々と生まれては絶滅していく ■CHAPTER 6 進化する霊長類 ──「恐竜のあと」に現れたものたち ■CHAPTER 7 狩猟採集民 ―─大移動する「ヒト」たち ■CHAPTER 8 定住の罠 ──農耕で「複雑さ」のレベルが変わった ■CHAPTER 9 農業国家 ──土地と富をめぐる栄枯盛衰 ■CHAPTER 10 グローバル化 ──破壊と苦しみのネットワーク ■CHAPTER 11 人新世 ──人は「絶滅」に突き進んでいるのか? ■CHAPTER 12 超未来 ──すべては消えて「無」になるのか?
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