史上最高に“映像が美しい邦画”は? 撮影がスゴい日本映画5選。黒澤も北野も岩井も惚れた…巨匠を支えた“神カメラマン”たち
名匠たちを陰で支えた撮影監督5選【Getty Images】映画作品は、しばしば監督の名とともに語られる。しかし実際には、映画は決して監督一人の手によって生み出されるものではない。なかでも撮影監督は、映像を形づくる存在として、監督と並んで欠かすことのできない役割を担っている。映画『敵』では、現実と夢、過去と現在が溶け合い、正体不明の“敵”が日常を侵食していく。その不穏を、全編モノクロで研ぎ澄ませたのが四宮秀俊だ。(文:編集部)[5/5ページ] ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
次世代の俊英・四宮秀俊の仕事
『敵』(2025)長塚京三【Getty Images】
監督:吉田大八 脚本:吉田大八 原作:筒井康隆 出演:長塚京三、瀧内公美、河合優実、黒沢あすか、松尾諭、松尾貴史
【作品内容】
孤独な元教授・儀助は、貯金が尽きれば自裁すると決め静かに暮らすが、PC通信に“北から来る敵”の噂が広がり不穏が忍び寄る。
現実と夢が溶け合う中、彼は雨の庭を眺め春の再会を思う。
【注目ポイント】
「日本映画は第3の黄金期に入った」
2010年代末、映画批評家の蓮實重彦はそう喝破した。この言葉どおり、その後の映画業界には、濱口竜介、三宅唱、山中瑤子、早川千絵と才能が次々と登場し、いまや百花繚乱の時代を迎えている。
さて、このような潮流の中で、多くの作家たちから厚い信頼を寄せられている撮影監督がいる。四宮秀俊だ。
四宮は、2001年、映画美学校フィクション・コースに初等科に入学。その後、高等科を修了し、映画にドラマ、ミュージックビデオと、さまざまな作品に参加してきた。
そんな四宮のキャリアの転機となったのが、2021年の濱口竜介監督作品『ドライブ・マイ・カー』だろう。
村上春樹の短編小説を原作とする本作は、カンヌ国際映画祭で日本映画初となる脚本賞を受賞したほか、アカデミー賞でも2008年の『おくりびと』以来13年ぶりとなる国際長編映画賞を受賞した。
また、四宮自身も、日本アカデミー賞の最優秀撮影賞や毎日映画コンクール撮影賞、ヨコハマ映画祭撮影賞を連続受賞。
名実ともに日本を代表するカメラマンとなった。
さて、そんな四宮にとって新たな挑戦となったのが、2025年公開の映画『敵』だ。
本作は、妻に先立たれた独居老人が「敵」に立ち向かう姿を描いた作品。
原作は筒井康隆の同名小説で、監督は『桐島、部活辞めるってよ』(2012)の吉田大八が務める。
吉田のラブコールによって参加した本作で四宮が挑んだのは、「全編モノクロ」の映像表現だった。
現実と夢、過去が錯綜する物語のなかで、正体不明の「敵」に追い詰められていく老教授の行き場のない生活が、モノクロームの画面によっていっそう不気味に浮かび上がる。
さて、四宮は、インタビューで、自身のキャリアを成功に導いた秘訣を、「話しかけやすい人になる」という言葉でまとめている。
「映画の現場には、基本的にあれやりたい、これやりたいって人たちが参加するわけじゃないですか。だから現場のコミュニケーションって複雑だし、重層的だし、難しいなと思うんですよね。話しやすい環境を作ることは、何かが上手くいっていないときに問題を発見しやすくします。(…)コミュニケーションによって引き起こされた人々の力がうまく軌道に乗ると、本当にそれはいい仕事になるし、いいモノが出来上がるんですよね」(「祝!第94回アカデミー賞 国際長編映画賞受賞!撮影監督・四宮秀俊氏に聞く映画「ドライブ・マイ・カー」におけるロケーションの魅力」『New Reel』)
映画はみんなで作るもの—。現代において、かつてのようなカリスマ的監督像は、もはや求められていないのかもしれない。
そんな時代にあってこの言葉は、映画制作の原点を静かに思い起こさせる。
【最初から読む】 史上最高に“映像が美しい邦画”は? 撮影がスゴい日本映画5選【関連記事】 ・映画の常識を塗り替えた…革新的撮影技法を発明した名作5選 ・原点は宮崎駿だった…ジブリが影響を与えた世界の名作映画5選 ・2025年、この世を去ったスターたちの最高傑作5選 【了】
1 2 3 4 5 PREV::全部傑作…史上最も面白い“群像劇”邦画5選。登場人物全員クセ強…一生に一度は観ておきたい名作をセレクト NEXT::【写真】映画『HELP/復讐島』劇中カット一覧